「チョコレート工場の秘密」はロアルド・ダールによる児童文学作品です。1964年の発表以来、多くのファンを獲得し、映像化も二度されています。
当サイトでも、映画はすでに取り上げています。こちらもご覧ください。
「チョコレート工場の秘密」
著者:ロアルド・ダール
絵:クェンティン・ブレイク
翻訳:柳瀬尚紀
製作年:2005年
出版:評論社
今回は、原作を読んでみた感想と、2つの映画と比べての印象をまとめてみますね。
私が手に取った「チョコレート工場の秘密」は、評論社から出ているロアルド・ダールコレクションの1冊です。
クェンティン・ブレイクの挿絵の楽しさもあって、サクサク読めます。
より主人公らしくなった映画のチャーリー
みんなが大好きなチョコレートを作っているウィリー・ウォンカのチョコレート工場。謎に包まれた工場を見学できるのは、チョコレートに入っていた黄金のチケットを手に入れた5人の子供たちだけ。
奇妙な工場見学の間に、わがままな子供から順に脱落することになります。4人の子供たちが脱落した時点で、チャーリーだけが残り、優勝となります。
私は、映画の2作品を観終わってから原作を読んだためもあって、映画と比べると、原作のチャーリーが最終的にウォンカに選ばれる必然性は薄いように感じました。主人公としてのインパクトが少し弱いな、と感じたのです。
映画では、チャーリーが主役であることを、はっきり示すポイントがありました。
「夢のチョコレート工場」(1971年)では、ライバル会社から、「ウォンカの工場からキャンディを盗ってきて」という誘いに乗るかどうかが、試金石でした。
また「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)では、工場に移り住むかわりに家族を棄てていくかどうか、が大きなポイントでした。
チャーリーが優勝するためには、なにかしらの試練と向き合うことが、映画では要求されていました。
そう考えると、原作でのチャーリーは、自分でなにかを選んだというよりも、他の子供たちが失格になったことで勝ち残った感が強く、自分でなにかを決断した感じがあんまりしないのです。
「チョコレート工場の秘密」新訳の4人の子供たちの名前がけっこう意地悪
ウィリー・ウォンカの工場へ見学に行けるのは、5人の子供たち。チャーリーはとても貧しいのですが、ほかの4人はお金持ちで、性格の悪い子ばかりです。
原作「チョコレート工場の秘密」を読んでいると、なんというか、他の4人の子供たちの名前に悪意を感じます・・・・・。ま、ジョークでしょうけど。
・Charlie Bucket・・・・・チャーリー・バケツ
「Bucket」はたしかに水とか入れる「バケツ」にあたるので、まぁ、わかるんですけどね。
・Augustus Gloop・・・オーガスタス・ブクブトリー
太っているから「ブクブトリー」って・・・・。率直すぎる。
・Veruca Salt・・・イボダラーケ・ショッパー
rが一つ多い「Verruca」にはイボという意味があるから、それとひっかけているのでしょう。映画「チャーリーとチョコレート工場」でも、ジョニー・デップ扮するウォンカがからかっていましたね。それにしても気の毒な名前。
・Violet Beauregarde・・・バイオレット・アゴストロング
ガムが好きで、ずっと噛んでいたという話が出てくるので、それに合わせて「アゴストロング」になっています。
・Mike Teavee・・・マイク・テレヴィズキー
テレビ中毒になっている少年なので、テレヴィズキーもまだわかりやすいですね。
わがままで好き勝手やってしまった子たちはそれぞれに脱落していきます。・・・話の展開に合わせて、名字に工夫がありますね。これはこれで、翻訳の工夫だと思います。
ウィリー・ウォンカとウンパ・ルンパの描き方を比べてみる
映画のウィリー・ウォンカはとてもクセが強い!
ウィリー・ウォンカの描き方は、それぞれに工夫がありました。
原作「チョコレート工場の秘密」では、無邪気なお菓子の職人であり、チョコレートとその工場を愛してやまない人物です。
映画では、それぞれの俳優が、ウィリー・ウォンカのキャラを膨らませています。
私が意外と好きなのは、「夢のチョコレート工場」(1971年)のジーン・ワイルダー。わがままな4人の子供たちが脱落していくときには、まったく心配したそぶりも見せず、むしろ冷淡でした。
最後にチャーリーを抱きしめるシーンで、やっと優しい眼になるのです。ジーン・ワイルダーの眼の演技が印象深いんですよ。
「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)では、ジョニー・デップのクセの強さが、ウォンカという人物には合っていると思います。
ただ「おかしな人が、さもおかしなことをやっている」という演じ方なので、不意に見せる意外な一面でぐっと魅力を増したジーン・ワイルダーに比べると、観る人によってはあまり乗り切れない人物造形になってしまっている気がしました。
もっとクセが強くなっていたのがウンパ・ルンパ!
脇役なんだけど、大きな魅力になっているのが、ウンパ・ルンパですね。原作と比べて、さらにシュールでクセの強いキャラになっていました。
・原作「チョコレート工場の秘密」
「ウンパッパ・ルンパッパ人」となっています。イラスト見ていると、かわいい感じですけどね。でも子供たちが脱落していくときに歌っている歌は、けっこうキツイ内容ですよ。
・「夢のチョコレート工場」(1971年)
オレンジ色の顔に緑色の髪の毛。見た目がシュール過ぎる。一度見たら忘れがたいインパクトを残します。それぞれ、小柄な方が演技したらしいですが・・・。強烈な色彩のキャラでした。
・「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)
ひとりの俳優の演技をCGで合成している演出。同じ顔のウンパ・ルンパが大量に出てきて、真面目な顔でけっこうキツイ歌詞を歌うのも、これはこれでシュール。
まとめ:原作のテイストがさらにシュールになった映画だった
原作は楽しいストーリーのなかにも、皮肉やブラックユーモアを交えた会話や描写があります。
どちらの映画も、原作のテイストを生かしながら、よりキャラの特徴を強めにして映像化がされていると思います。
- チャーリー⇒原作よりも主人公としての強さが増していた。
- ウィリー・ウォンカ⇒「夢のチョコレート工場」のジーン・ワイルダーがけっこう好き。
- ウンパ・ルンパ⇒原作のイラストはかわいいめだが、映画ではシュール過ぎる・・・。
同じ作品を小説、映画などでいろいろ比べるのは楽しいです。ひとつの作品をなんども楽しめます。「チョコレート工場の秘密」も、思い出深い作品になりそうです。
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