エラリー・クイーンによる悲劇四部作最後の作品。ドルリー・レーンが主人公を務める作品はこれが最後となります。
衝撃的なのはだれが行ったか、以上にその結末でしょう。『Xの悲劇』から順に読んで、ぜひ最後まで読みきって欲しいシリーズです。
『レーン最後の事件』の特徴
- ブルーノは出番なし(内容的に出せなかったのではないかな・・・)
- ペイシェンスの探偵ぶりが定着しつつある
- ペイシェンスの恋人的存在が登場
- ドルリー・レーンの決断と衝撃!
前作『Zの悲劇』同様、元警視サムとペイシェンス親子が事件を引き受けるところから話は始まります。
シェイクスピアの古い書籍を巡る窃盗事件が発生しますが、前半は少し長々と稀覯本の話が続くので、やや退屈に感じる人もいるかも・・・。わりとマニアックな話ながら、私は好きですけど。
面白くなるのは、シェイクスピア直筆の手紙を巡って、激しい争いが展開されるあたり。果たして、手紙には何が書かれていたのか、手紙を隠し場所から持ち去ったのは誰なのか?
「誰がそれを行ったのか?」を知るまで、ドキドキしながらラストシーンまで読みました・・・。本を読んでいる最中、こんなにドキドキしたのも久しぶり。
ペイシェンスの成長について
前作ではまだまだ見習い的存在だったペイシェンスですが、本作では推理によって、真犯人まで気づいてしまいます。まさにペイシェンスの存在によって、話が動くのです。
ペイシェンスが犯人に気づくきっかけは、ごくささやかな目覚まし時計。この道具がとてもいいと思いました。こんな小さなアイテムによって、今まで築いたものが崩れていくんだなって思って。
ペイシェンスの今後を想像すると、かなりの痛手を負ったけど、それでも探偵という職業を続けていくんじゃないでしょうか。探偵を自分の天職として、ペイシェンスは自覚したんじゃないかな。
ロウ青年とは喧嘩もするけどけっこういいカップルになりそうですね。出てきたキャラそれぞれに今後の道筋をつけて終わるあたりも好印象。
レーンの解決について考察
最後にレーンが取った行動は、自責の念に駆られて・・・ではないですね。それならば、『Yの悲劇』のラストシーンの時点で、同様に責任取らないといけないから。
ペイシェンスという次世代の探偵が登場し、もう自分がいる必要性が無くなった・・・という感覚ですかね。私の意見ですが。
自身の退場のタイミングを自分で決めるあたり、やはり最後まで舞台にいる人だったのではないかな、と思います。
ドルリー・レーンは四部作の中で、探偵として登場し、最後はシェイクスピアに人生を捧げた人として全うするわけですね・・・。
結末の衝撃や余韻を楽しむための小説なので、シリーズ全てをじっくり読んできた人のためだけのご褒美(?)みたいなエンディングなのかもしれません。
四部作は最後まで読み切ってこそ、ですね。
まとめ:長く覚えていたい衝撃があるシリーズ
私も、ラストの衝撃でしばらく呆然・・・となってしまいました。そのくらいドルリー・レーンというキャラが自分の中で印象深かった、ということでもあります。
ショックでしたが、作品の結末としてはとても鮮やかで、長く記憶に残るはずです!
私にとっては、今年読んでおいて良かった作品の筆頭になります★
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