「エミールと探偵たち」ベルリンを舞台にした少年たちの活躍が楽しい!

ハートのラテ 児童文学
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子供のころ、エーリヒ・ケストナーの作品が大好きでした。

久しぶりに読もうと思ったのは、先日読んだ「ベルリンは晴れているか」のなかで主人公のアウグステが大事にしていた書籍が「エミールと探偵たち」だったからです。

たしかに読んだはずなのですが、かなりの年月が流れ、すっかり話を忘れていました・・・。

味のあるイラスト、軽快なテンポで進む話、読んでいるときのワクワク感、たしかに子供時代に夢中になったお話の世界がありました。

  • ケストナーの代表作を読みたい
  • 優れた児童文学作品を知りたい
  • 少年たちの物語を読みたい

といった方にお勧めの作品になります。

 

作者エーリヒ・ケストナーについて

新聞

ケストナーは1899年生まれ、1974年に75歳で没。ドイツのドレスデンで生まれ、貧しい中で育ち、のち新聞記者になりました。

作家として成功するものの、当時のドイツで台頭してきたナチスからは文学作品の執筆を禁じられてしまいました。

偽名で執筆をつづけるなど苦しいなかで文学をつづけた人です。

ケストナーの児童文学には、暗い影はそんなに見えません。けれど人生や世の中で大事だと思うことがぎゅっと詰まっていて、子供にも、そして大人にも愛される作品になっています。

「エミールと探偵たち」のあらすじ

エミールはお母さん思いの優しい少年。あるときベルリンに住むおばあさんの家に、一人で出かけることになりました。

気をつけていたのに、電車内で居眠りしたすきに大事なお金を盗まれてしまいます。犯人の目星はついています。電車内にいた山高帽をかぶった男性です。

ベルリンで降りたエミールは山高帽の男を追跡します。その途中で知り合った少年グループとチームを作って、犯人を追い詰めます。

大事なお金をどうやって取り返すのか?少年たちの知恵の見せ所になります。

「エミールと探偵たち」はここが面白い!

トランク

エミールがベルリンの少年たちと仲良くなり、少年たちのチームワークで窃盗犯を追い詰めるさまがテンポよく進みます。少年たちはかなりの人数にのぼりますが、メインになるのは3人くらいです。

  • グスタフ・・・警笛を持っている少年。最初にエミールを見つける。
  • 教授くん・・・戦略を練る監督タイプ。少年たちに指示を出す。
  • 火曜日くん・・・連絡係を全うした。

お金を取られてしまったエミールのために、知恵をしぼって役割分担を決め、食料や物品を用意して犯人を追いかけるさまが楽しくもあり、スリリングでもあり、読んでいて楽しい場面です。

子供時代に読んで、ワクワクして読み進めたことを思い出します。子供たちを取り巻く世界のなかには、お金を盗むような悪人もいれば、バスのなかでお金を与えてくれるような親切な人もいます。

母子家庭でずっとお母さんと二人きりの世界にいた、エミールというひとりの少年が、大都会であるベルリンのなかでちょっとした試練や冒険に向かう話なのです。

エミールという少年にとってベルリンは未知の世界であり、はじめて触れる「お母さんがいない世界」です。

少年の日にだけありうる、ちょっとした冒険が生き生きと描かれていて、自分もこのチームの一員なら・・・・とちょっと思ってしまうのです。

作者であるケストナー本人が作品内に出演している、という部分もあって、ちょっと笑ってしまう仕掛けがあります。

「ベルリンは晴れているか」のなかの1冊として

「ベルリンは晴れているか」のなかでキーアイテムとして登場した「エミールと探偵たち」ですが、小説の中で、「エミールと探偵たち」の内容そのものには触れられていません。

アウグステという主人公が、ずっと大事にしていた1冊の本です。

 

なぜこの1冊だったのでしょうか。単なるわたしの推察にすぎませんが、

  • ベルリンが舞台になっている
  • 子供たちが知恵をしぼって大人を懲らしめる痛快な作品である
    ⇒「ベルリンは晴れているか」の主人公アウグステの子供時代に読む作品にふさわしい
  • ケストナーがナチスとは対立的な立場にあった人物だった

といった点から選ばれているのかもしれません。

そういえば、「ベルリンは晴れているか」の作者である深緑野分さんのインタビューでこんな一節がありました。

小説の力はそれほど信じていない、と深緑は言う。

「たった一冊の本を読んだだけで、人間は変わらないと思っています。ただ、何かアクシデントに直面した時に、ふと昔読んだ一文や、主人公が選んだ決断が頭をよぎるかもしれない。そんな時に自分の本が、間違った方向に向かわないための方位磁石というか、羅針盤のような存在であれたらなと思うんです」
深緑野分さんインタビュー「本は心の羅針盤」「小説丸」より

*インタビュー全文が読めます。

小説の主人公であるアウグステがずっと大事にしていた思い出の一冊。つらい記憶や戦争の傷跡と向き合っていく過程において、「エミールと探偵たち」はアウグステにとっての「羅針盤」的アイテムとして選ばれていました。

まとめ:子供時代の幸運な冒険の一冊

伏せられた本

読み返すと、私は子供のころにいい作品に出合っていたんだな、と改めて思います。

説教臭いわけでもなく、エミールがお母さんを慕う気持ちや、あっという間に友達になってしまう町の少年たちといった人物が気持ちよくて、引き込まれます。

大人が読んでも、子供時代のひたむきさを思い出して、いいと思いますよ★

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