映画と比べて楽しむ!小説『オリエント急行の殺人』を読んでみた!

林檎と本 ミステリー・サスペンス
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『オリエント急行の殺人』はアガサ・クリスティーの代表作品です。(いまさら・・)

 

映像化されたこともしばしばですね。あまりにも有名すぎて、かえってレビュー書きにくいくらいの作品です。

 

知りたかったわけでもないけどネタバレを聞いてラストだけ知っている、みたいな人も多いらしく、できたら未見の方には知らないままで見てほしい作品の一つです。

 

ここから下には、ネタバレがあります!まだ作品を見ていない方はご注意ください!

 

小説『オリエント急行の殺人』と映像作品を比べてみよう!

 

今回、レビューを書くにあたって、他の作品と比べて書くことにしてみました。『オリエント急行の殺人』の特徴がわかりやすくなると思います。

 

他の映像作品との比較は、特にラストシーンに絞って書いてみることにします。

 

リンクを貼っておくので、興味を持った記事も読んでいただけると嬉しいです!

 

一つの原作からいろんなバージョンがある場合は、比べて楽しむという方法がありますよね。

 

あなたにとって好きな『オリエント急行の殺人』はどれでしょう?

 

『オリエント急行の殺人』

著者:アガサ・クリスティー

翻訳:中村能三

出版社:早川書房

出版年:2003年

 

『青列車の秘密』との比較

松ぼっくり

 

まずは小説ですが、『青列車の秘密』も、列車内で起こった事件を解決していくポアロシリーズの作品です。

 

旅行中の事件という共通点はありますが、比較してみると、オリエント急行の殺人の方が緊迫感高いんですよね。

 

『オリエント急行の殺人』では、雪のせいで閉じ込められたために、乗客たちや車掌、探偵と言った登場人物たちが狭い空間内に一緒にいる状態が続きます。

 

この十数名の中に犯人がいることは分かっているけど、犯人像は性別も体格も漠然としていて、絞りきれない。かなりの緊張状態で過ごすことになります。

 

逃げ場がない、身動きできない。この緊迫感が大きな特徴です。

 

『オリエント急行の殺人』は、舞台が豪華列車「オリエント急行」だけに限定されている点が、作品の成功のひとつの理由だったと思うのです。

 

 

『オリエント急行殺人事件』(1974年の映画)との比較

天使の像

 

今回、原作を読んでみたら、最後の解決方法の選択がわりとあっさりしているのに、ちょっと驚きました。

 

  • 外部の者の犯行説
  • 内部の乗客の犯行説

 

2つの説を提示するポアロ。果たしてどちらの案を取るのか?ここに大きなドラマや葛藤があり得ます。

 

ラチェットという悪役を殺害したこととその動機との関係から考えて、果たして真実を警察に告げるのかどうか。

 

原作では、会社の重役が外部の人間による犯行説を選び、ポアロはあっさりと事件から引き上げます。

 

映像化する時には、このラストの決着の描き方にけっこう差があるんですよね。

 

1974年の『オリエント急行殺人事件』では、全体的にかなり原作に雰囲気が近かったんだな、と思います。

 

外部の人間による犯行という説を取ったあと、登場人物たちが乾杯するシーンまであり、どちらかというと、明るい雰囲気すら持っていました。

 

テレビドラマ『名探偵ポワロ』との比較

薔薇

 

イギリス製作のテレビドラマ『名探偵ポワロ』では、ポアロはかなり逡巡したうえで、外部犯行説を採用します。

 

法律を優先して乗客らによる犯行であると真実を告げるのか、それとも正義を優先して外部の人間による犯行とするのか。

 

ポアロの内面は揺れ、大きな決断までの苦悩を表現したドラマになっていました。

 

主演デヴィッド・スーシェの苦しみのある表情が印象深く、まさに苦渋の決断であったことが伝わるのです。

 

極寒の地であるという気候の厳しさも心情にあっていて、舞台の見せ方も合っていました。

 

真実を追求するという自分の信念を曲げるというのは、プロにとっては敗北感を感じるものだと演技で示してくれた。その点を私は高く評価しています。

 

 

『オリエント急行殺人事件』(2017年の映画)との比較

キャンドル

 

さらにリメイクされた『オリエント急行殺人事件』(2017年の映画)では、乗客らが列車から降りて、トンネルの前にずらっと横一列に並ぶという構図。

 

ポアロ対乗客の構図をよりハッキリ見せていました。それぞれの人物の内面を吐露させ、どんな人物であるか、明示していました。

 

いろいろと人物の設定や舞台の演出に工夫はあるのですが、どれも中途半端な印象に終わったな、という感想が強かった作品です。

 

2017年の『オリエント急行殺人事件』は列車の外に舞台を広げたことで、せっかくの緊迫感を削いでしまった感じもあり、私はちょっと演出に乗れませんでした。

 

まとめ

 

私は、かつて父がアルバート・フィニー主演の映画『オリエント急行の殺人』を観ていた時に一緒に見たので、映画で内容を知ったタイプです。

 

たしか小学生のころだったので、私にとって初めて触れたアガサ・クリスティー作品だったと思います。

 

私の個人的な好みとしては、テレビドラマ『名探偵ポワロ』が最も好みです。

 

けっこう重たいというか、シリアスな雰囲気なので、人によっては苦手かもしれません。

 

主人公ポアロの心情の掘り下げや緊迫感など、見ごたえのあるドラマに仕上がっています。

 

『オリエント急行の殺人』は、悪人を裁くとはどういうことか、正義とは何か、という問いを含んだ作品です。

 

原作では意外とあっさりと終わっていますが、映像作品では重たい問いに向き合っている作品が、印象に残ります。

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