アガサ・クリスティー「邪悪の家」レビュー!小悪魔・ニックが魅力的!

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今回紹介する本は、「邪悪の家」です。タイトルからして不吉そうな作品ですね・・・。

 

アガサ・クリスティーによるポアロシリーズの第6作です。

 

結論としては、なかなか面白い作品でした。あらすじ、見どころ、そして考察を書いてみたいと思います。

 

 

「邪悪の家」

著者:アガサ・クリスティー
翻訳:田村隆一
出版社:早川書房
出版年:2004年

 

「邪悪の家」あらすじ

ギフト

 

休暇中にポアロが出会った美女・ニックは古い館エンドハウスを所有している女主人だった。聞けばニックは最近、立て続けに危険な目に合っている、と言う。

 

ニックが狙われる理由を探るポアロだが、エンドハウスで開催されたパーティーでまさに悲劇が起こってしまう。ニックを狙っているのはだれなのか、ポアロが捜査に乗り出す。

「邪悪の家」の見どころ

チョコレート

 

今回はヘイスティングズが登場します!(私にとっては、ここがポイントだったりする・・・)いないとなぜか物足りなく感じる、ヘイスティングズ大尉です。

 

登場人物が多いですが、ポアロが作中で作る犯人リストでは、AからJまで、登場人物の容疑がメモ化されているので、頭を整理しつつストーリーを追えますよ。

 

最後にもちろん犯人はわかるのですが、意外な人物が登場してきます。リストをじっくり見ながら、もしやこの人物では・・・など想像しながらストーリーを追ってみてください。

 

屋敷の主人であるニックのキャラは、なかなかいいキャラです。

 

狙われているのに気丈にふるまってみたり、感情的になったり。なんでも鼻であしらっている、けっこう小悪魔っぽいキャラなので、周りが振り回される感じがあります。ポアロも例外ではありません。

 

ちょっと奔放で身勝手な印象のあるニックと、その周辺のやや胡散臭い人たちの様子を楽しみつつ、犯人を考えてみましょう。

 

本作ではポアロと言えど、裏をかかれたり、思わぬところで焦ったり、振り回されることが多く、最後のどんでん返しまで、飽きずに読むことが出来ましたよ。

 

また本作では小道具として、チョコレートの箱が登場します。チョコレートの箱と言えば、短編集「ポアロ登場」にも印象深いエピソードがあります。

 

「ポアロ登場」に収録されている「チョコレートの箱」の話は、また警察だったころのポアロの失敗談なんですよ!うぬぼれがちなポアロに、失敗経験を思い出させるのが、「チョコレートの箱」なんですよ。

 

シリーズを通して読んでいると、昔の作品とリンクしている点が面白いですよね。

 

ここから下には、ネタバレがあります!まだ作品を見ていない方はご注意ください!

 

「邪悪の家」は巧妙な芝居の舞台だった!

手紙

 

ちなみに私、推理小説は本当に犯人がわからないんです・・・。今回もきれいに最後まで引っ張られて、最後で犯人が判明して、「あ、そうなんだ」とびっくりして終わり。ま、楽しめますけどね。推理小説を読みなれている人なら、割りと本作の犯人をあてられる人もいるようで。。

 

で、犯人はリストアップされたAからJまでの間にいる、と信じて探していても、見つからないんですな。このあたりが私は好きです。ひっかけ問題みたいで。

 

最終的な犯人はニックだったので、要するに「いのちを狙われている」話自体がニックの自作自演だったわけで・・・。

 

ニックと、いとこのマギーの本当の名前が 「マグダラ」という共通の名前であったことがキーポイントです。

 

そして冒険家シートンと婚約していたのはニックではなくて、いとこのマギーだったことなど衝撃の事実が判明するあたりが読んでいて、面白いシーンです。

 

畳みかけるように事実を提示していくシーンは、やはり勢いに乗って読めます。

 

本名が同じ、なんていうちょっとした情報は、ポアロとヘイスティングズとの何気ない会話なんですよね。

 

ヘイスティングズ本人は、そんなに役立つ人物でもないのに(おーい)、ほんのちょっとした謎ときのきっかけ作りとして、かなりいい位置にいるんですねー。

 

なにか良くないことが起こるイメージを持つ「邪悪の家」と言われる古い屋敷・エンドハウスも、なにやら怪しい雰囲気がある館で、舞台装置として魅力的。

 

「エンドハウスでお芝居をやってみたい」と語っていたニック。本当に芝居を行って、計画を遂行し、ポアロまで振り回していたんですね。

 

最後までなかなか真相にたどり着けないポアロですが、そのぶん、最後にエンドハウスの中で展開される一種の劇には、ぐいぐいとした勢いがあって、一気に読めました★

 

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