「スタイルズ荘の怪事件」にみる人物の魅力を考察してみる!

本と眼鏡と紫の花 ミステリー・サスペンス
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エルキュール・ポアロがはじめて世に登場したのが本作「スタイルズ荘の怪事件」です。

展開が非常によく作られていて、最後まで飽きずに読むことができました。(ミステリーで大きなネタバレをするのは避けたいので、当記事ではあんまり内容には踏み込んでないです。)

この記事では、登場する人物の魅力について考察してみます。

「スタイルズ荘の怪事件」

著者:アガサ・クリスティー

翻訳:矢沢聖子

早川書房 2003年

 

「スタイルズ荘の怪事件」のあらすじ

舞台は第一次世界大戦中のイギリス。休暇中のヘイスティングズは、旧友であるジョン・カヴェンディッシュの屋敷へ身を寄せることになります。

のんびり休暇を過ごすはずだったのに、ジョンの母親であるエミリー・イングルソープが殺害されてしまった。

ヘイスティングズの友人である探偵・ポアロがスタイルズ荘の近くに滞在していたため、事件の解決に乗り出す。

ポアロとヘイスティングズの性格の違いを楽しむ

本作ですでに、ポアロとヘイスティングズの性格、キャラの魅力がしっかりと出ています。

ポアロは自信家で潔癖症の小男。

ヘイスティングズは・・・妙に惚れっぽく、勘違いが多い・・・・・。

初期のころからヘイスティングズはこういう性格だったのね。

ポアロは潔癖症でかっちり整然としたものに美しさを見出し、頭脳に絶対の自信を持っているベルギー人探偵。

卵型の頭部や跳ね上がった口ひげなど、キャラが立っていて、造形という点で非常に優れています。このキャラ造形がなかったらここまで愛される作品にならなかったかもしれない、と思います。

「スタイルズ荘の怪事件」の小説のなかでは、殺害された女主人に対してかつての恩があるために、ポアロが義理堅い一面を見せるシーンがあり、印象的です。(イギリス製作のドラマではこういうシーンがなかったので、ちょっと残念)

必ずしも周囲から愛される人物ではなかったイングルソープ夫人ですが、亡命してきたベルギー人であったポアロに親切にしてくれた点を忘れない、このあたりに情の厚さを感じるのです。

ヘイスティングズは目の前にきれいな女性がいたらすぐに夢中になってしまって、単純だなぁ、と苦笑してしまうキャラになっています・・・。

ただ超人的な主人公・ポアロに対して、もうすこし読者に近い立場の人物を出さないと読みづらいので、ヘイスティングズはやはり欠かせない立ち位置にいるんですね。

コンビになる2人のバランスの良さや関係性がすでにできています。

エヴリン・ハワードの魅力

本作「スタイルズ荘の怪事件」のなかでとても重要で、魅力的な人物として映ったのが、エヴリン・ハワードという人物でした。

話し方がぶっきらぼうでそっけなくて、率直。でも殺害された女主人のことを友達のような立ち位置で仕えてきた人物です。

感情表現がはっきりしていて、憎めない性格の人物となっています。登場人物が憎めない人であればあるほど、その後の展開が興味深い。

ミステリーを再読する楽しみ

コーヒーカップ

ほんのちょっとした説明やセリフに、実は大切なヒントが混ざっていることがあります。

最後の最後まで読んでいって「あ、最初に出てきたあの情報はここにつながるんだ!」ってわかって面白く感じました。

こう、パズルのピースをうまく嵌めていった感覚を感じるのが、推理小説の面白さのひとつだと思うのです。

アガサ・クリスティーの作品は、トリックの巧妙さを楽しめるタイプの作品が多いらしいので、この点は私の好み。この後の作品も、1作ずつ、じっくり読んでいってみたいです。

ミステリーは、トリックが分かってしまえばもう終わり、とつい思ってしまいますが、前述のように、人物の行動やセリフ一つ一つにこまやかな配慮がされた本作のような作品では、結末や全体像を知ったうえで、部分部分それぞれのピースの形を味わうという楽しみが残されています。

しかも、古き良きイギリスの空気感が作品全体からただよっていて、ただのなぞ解きに終わらない読書の楽しみを存分に味わえる作品でもあります。

上質なミステリは再読に耐えるのですね。

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