『X の悲劇』レビュー!キレのいいミステリー好きにはおすすめ!

クッキー ミステリー・サスペンス
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『X の悲劇』はエラリー・クイーンによる悲劇の四部作の最初の作品です。 

「レーン四部作は本作を最初として順番通りに読むべき!」というのが定説のようです。 実際に読み終わって本当にその通りだと思います。

シリーズを合計して、一つの作品みたいな作りになっているので、できたら四作品を続けて一気に最後まで読むのがおすすめです!たっぷり作品世界に浸ることができますよ。

『Xの悲劇』

著者:エラリー・クイーン
訳者:越前敏弥
発表年:1932年
出版社:株式会社KADOKAWA

ドルリー・レーンのキャラの立ち方が魅力!

紫

主人公は元シェイクスピア俳優のドルリー・レーンという初老の男性です。俳優として成功していたレーンですが、聴覚を失って引退。その後、探偵業に興味を覚えた、という設定になっています。

全部で四作品あるシリーズなのですが、レーンの探偵としての魅力を最も堪能できるのは、おそらく本作だと私は思います。

捜査機関から事件のあらましを聞いただけで、ある程度犯人の目星をつけてしまい、その後は次々に観察眼の鋭さや推理力を発揮してくれます。

時には自分でメーキャップで他人に化けて捜査現場に乗り込むなど、随分風変わりなことも行いますが、その奇妙なありさまも含めて、私はレーンという探偵のストーリーをとても楽しむことができました。

本作の魅力は多分に、ドルリー・レーンと言う奇妙な主人公の魅力に依っています。

会話の端々にシェイクスピアからの引用があり、人生のほとんどを演劇に費やしてきたその一端が伺えます。(最初は少し奇異に感じるかも・・・)

居所が「ハムレット荘」なる中世風の壮大なお屋敷であるなど、どこまでも芝居がかった設定です。

もちろんシェイクスピアをそんなに知らなくても作品自体は楽しめます。 でもシェイクスピアを一度読んでみたいという好奇心に駆られるので、そのあたりも作品の力量かなと思います。

鮮やかなミステリーを楽しめるのが『Xの悲劇』

ミニバスケット
ここから下には、ネタバレがあります!まだ作品を見ていない方はご注意ください!

本作が執筆されたのは1932年。20世紀初頭のニューヨークを舞台に、列車やフェリーといった乗り物を舞台にして、殺人事件とその解決が繰り広げられます。当時の都市の雰囲気を上手く取り込んで話が展開されます。

満員の電車の中での奇妙な凶器、フェリー乗場でのむごい事件。そして苦労して助けたはずのドウィットも思わぬ形で悲劇に見舞われます。とりわけドウィットの歓喜の極みのシーンから、悲劇へ至る展開は、読んでいて愕然としてしまいました。展開のテンポもいいと思いました。

すでに四部作を読み終わった時点から振り返ると、『X の悲劇』がシリーズ中で最もミステリーとしては面白かったと思います。意外な犯人をピタリを当てる、というミステリーの快感が味わえるので。

もちろん、シリーズ中のどの作品にも、それぞれの魅力があるので、楽しめるポイントが毎回少しずつ変わっていくと言ってもいいでしょう。

一度は犠牲になったと思わせておいた人物を、後で正体を明かしていく、どんでん返しの展開など、本格ミステリーの先駆けとして大変人気があるのも納得のいくものでした。

また ダイイング・メッセージ はエラリー・クイーンの得意な手法ですが、本作においても非常に重要なポイントとして登場します。

「X」というテキストの意味が明かされるのは、本当にラストのシーンなのです。謎めいていたテキストの意味が分かると、その鮮やかさを味わいながら読み終えることができました。

サム警視とブルーノ検事の変化にも注目!

レーンの発言は、最初はサム警視やブルーノ検事からは単なる妄想のような扱いですが、だんだんと風変りな探偵の推理にのめり込んでいく様も面白い。

話の中盤では、ドウィットを起訴しておきながら、レーンの推理によって論理を覆されてしまうなど、捜査機関の二人は手痛い失敗を味わいます。

最終的にはサム警視やブルーノ検事も、レーンの能力を認めないわけにはいかなくなります。チームとしての3人の結束が固まっていく様子も、読んでいて面白い点です。

ブルーノ検事よりサム警視のほうが先にレーンに打ち解けていて、そのあたりが四部作の最後までずっと付き合いが続くきっかけになったのかな、という気もします。

まとめ:まずは『Xの悲劇』からスタートしましょう!

 最初に読み始めた時は主人公があまりにも浮世離れしているので奇妙な感じがしましたが、最終的にはその語り口にもすっかりハマってしまって、四部作を読み終えるのがもったいない感じでした。

今後、四部作のレビューを少しずつアップしていきますね☆

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