私も以前読んだことがあり、久しぶりに手にとって読んでみました。どのあたりが人の気持ちを引き寄せるのか、考えてみました。
作:エリック・カール
翻訳:もり ひさし
出版社:偕成社
発行年:1997年
エリック・カールって?
素敵な作品に出会うと、なんだか作者にも興味が出てきます。
エリック・カールは1929年、ニューヨーク生まれ。子供のころにドイツに移住し、第二次世界大戦中に少年時代を過します。
その後、グラフィックデザイナーとして活躍してから、絵本作りに取り組みます。
「はらぺこあおむし」は1969年の発表。世界中で親しまれる作品となっています。日本では偕成社から発売されていますね。
スペシャルサイトで写真を拝見したら、なんだかとても柔和な顔の方ですね。

偕成社によるスペシャルサイト。画面下の「創作のひみつ」では写真で製作方法を見られます。
「はらぺこあおむし」の特長
私が手にとった「はらぺこあおむし」は、ボードブックタイプ。(複数のタイプがあります)13センチ×18センチの長方形で、小さい子でも持ちやすいサイズです。
そして、一枚一枚の紙が分厚い!頑丈なつくりになっています。これなら小さい子が何度読んでも、大丈夫かもしれない。
ページを開くと、ラフな雰囲気の絵柄で大胆にデフォルメされたお月さまや太陽、葉っぱそしてあおむしが描かれています。
あおむしの造形がとても優れていて、顔が赤くて、体が緑色。もこもこしたあおむしの体は、ふぞろいな楕円をつないだようなフォルムになっています。
エリック・カールの他の絵本の絵をいくつか見てみたら、馬とかゾウなどの生き物も、関節でくっきり分かれていて、生き物のフォルムの作りが面白い。
エリック・カールはコラージュという技法で、色付きの紙をさまざまな形に組み合わせて生き物を描いています。
「はらぺこあおむし」の楽しいところ
ボードブックタイプでは、あおむしが食べていく果物やお菓子の絵には実際に紙に虫食いの穴が開いているのが、あおむしらしさがあって、すごく面白いアイデアです。
お腹のへったあおむしは、たくさんのフルーツやお菓子をもりもり食べていきます。
だんだん増えていく食事の量が横長の画面の中にならんでいて、食べていく勢いを感じさせます。
食事の量の増え方がずらっと並んだフルーツやお菓子の数で視覚ですぐにわかるので、楽しい。
・・・ちょっと暴食気味ですが。
あおむしが太っちょになって、さなぎになって、そしてついに最後に見開きで蝶になった、という
緩急のついた展開が見事に決まっています。
大きな蝶のはねのカラフルさは、今までに食べてきたものの色合いを思わせます。
日本語の翻訳もとてもすばらしい。特に「おなかはぺっこぺこ」といったリズミカルな表現は読み聞かせがしやすいし、おぼえやすい。
いっぴきのちいさなあおむしが生まれて、立派な蝶になるまでの、いわば成長のプロセスをカラフルなイラストで描いていて、ちょっとハラハラしながら、あおむしの世界を見られる点がいいんです。
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