「ときどき旅に出るカフェ」スイーツ好きにおすすめ!旅の気分で読める!

本とコーヒー 小説
この記事は約5分で読めます。

今回、ご紹介するのは旅×スイーツの組み合わせが楽しい小説「ときどき旅に出るカフェ」です。

ツイッターでお勧めしている方がいたので、手に取ってみた本です。

カフェや食堂が舞台になっている物語は今までにもドラマや漫画などでたくさんあるのですが、「ときどき旅に出るカフェ」は「旅」をコンセプトにした小さなカフェが舞台です。

どんなカフェかな、と思って本を開くと、第一話からその魅力に気持ちを引っ張られました。

本を読みながら、近所にあるカフェに行っている気分になれます!

読書そのものが、実は異なる世界や空間への旅なのですが、大きなファンタジー世界ではなく、ささやかな話のなかで、そのことを思い出させてくれる物語です。

「ときどき旅に出るカフェ」

著書:近藤史恵

出版社:双葉社

発行年:2017年

「ときどき旅に出るカフェ」あらすじ

お茶の時間

主人公は、37歳になった会社員・瑛子。すでに会社勤務は長くなり、自分のマンションも買って、それなりに恵まれた生活をしている。

でも独身で子供もおらず、実家とは距離を取っている。周りの友人たちは結婚や出産を経験し、自分だけはシングルのままで過ごしている。

不自由しているわけではないのだけど、ちょっと物足りない生活のまま、時間が過ぎていると思っている瑛子。

近所にあるカフェを見つけて入ってみたら、瑛子がいる会社を6年も前に辞めた円(まどか)が運営するカフェだった。

円のカフェ・ルーズは、「旅先の美味しかった菓子やメニューを再現する」ことを特長にするカフェ。海外などに旅行に行った円が、現地で食べた味を再現してくれる、というわけです。

いろんな国のメニューがちょっとずつ登場します。実際にその地に行ったことがなくても、円が作るスイーツを食べることで、ちょっとだけ他の場所に行った気分を味わえるのです。

カフェを舞台に、いろんな客の人生の断片が見えてきます。ちょっとだけ気持ちを外に向けてくれる場所として、カフェ・ルーズはあり続けます。

「ときどき旅に出るカフェ」の3つの魅力

珈琲とペン

 

ほんとに食べてみたい!旅先の魅惑的なスイーツ

本作に出てくるメニューは、どれも魅力的です。カフェや食堂が舞台なら、メニューが魅力的でおいしそう、と思わせる力を持っていることはとても大事です。

「こんなメニューなら食べてみたい!」と読者に思ってもらえるかどうかで、ある程度、作品の魅力が決まってしまうからです。

メニューが美味しそうなら「自分も行ってみたい!」と作品の中に、読者も入り込めます。

北欧の冷たい苺のスープ、ロシア風チーズケーキ、ドボシュトルタ・・・。名前を聞いているだけでもワクワクします。

旅先での食事は大きな楽しみや期待のひとつです。日本に帰ってからまた料理を再現することで、(厳密に再現するのは無理でも)好きだった旅先を思い出すことができます。

「カフェ・ルーズ」という「本当に近所にあると嬉しいカフェ」という舞台を作っている点が魅力の作品です。

30代シングル女性にとっての「居場所」という魅力

 

本作の主人公・瑛子は社員として働いていて、衣食住には不自由のない暮らしをしています。ただ、このままシングルとして時間が過ぎるような人生に、やや不安も感じています。

瑛子にとっての新たな居場所として、カフェ・ルーズは存在します。

大きな不満があるわけではないけど、将来に不安や怖さがある、という女性には共感しやすい設定です。

家と会社とは別の、ちょっと違う場所。くつろげて、気楽に会話ができて・・・。日常とはちょっと違う空気を吸える場所がないと、やはり息苦しいのでしょう。このあたりの感覚はよくわかる。

いつもとは違う場所を持っているほうが、日常の暮らしももう少し、豊かになり、変わってくる。

仮に、円というカフェの店長を主人公にした場合、自分が作るメニューや旅の話に力が入りすぎて、やや独りよがりな話やキャラになったかもしれません。

瑛子という、30代の女性客の視点を設定することで、店長・円の独りよがりではなくて、客から「求められている場所」として描くことに成功しています。

最初は外に出るのもちょっと面倒・・・みたいだった瑛子が、カフェ・ルーズにけっこう足しげく通うようになるのです。

カフェという場所で出会う人の魅力

 

カフェに通う人たち同士は他人ですが、淡い関わり合いを持つこともあります。カフェではいろんな会話が飛び交います。

カフェ・ルーズのなかのちょっとした会話から、意外なつながりになることもあります。近所に住んでいる女の子の家庭や、常連客が前に勤めていた会社のことなど、客同士の関わりから大きく展開する話もあります。

 

カフェというのは不思議な場所だ。
そこで人は、相談事や秘密を打ち明ける。隣にいる客や、店員に聞かれることは気にも留めない。
まわりの人たちの会話は、流れている音楽のように聞き流す。
だが、聞き流しても消えていくわけではないのだ。
「ときどき旅に出るカフェ」/近藤史恵/双葉社/2017年/P135

カフェ・ルーズにやってくる客にもそれぞれに悩みや後悔があります。このお客はどこにでもいそう、または自分にも当てはまる、といった気持ちをさりげなく再現できているのが、本作の魅力です。

旅でもうすこし自由になれる!

手の中のカップ

カフェの店長である円も、しっかり自立した人物として描かれています。旅が円の考えを変えてくれたエピソードも出てきます。

いつもの日常とは少し違う空間=カフェ・ルーズを作ることで、円は円なりに自分の居場所を見つけたのです。

 

自分が常識だと思っていることが、狭い範囲での常識に過ぎないことを思い知らされる。円は、少し寂しげな顔をした。
「ええ、そうなんです。だから、わたし、旅が好きなんです」
「ときどき旅に出るカフェ」/近藤史恵/双葉社/2017年/P205

 

円が作るスイーツは「自分が旅先で食べてみて、美味しかったもの」ばかりです。いわば思い出の一部をちょっと提供している感じでしょうか。

ひとつひとつのスイーツに、ちゃんと意味や物語があって、登場人物たちのドラマとうまくかみ合っているのです。

穏やかな雰囲気のカフェ・ルーズですが、ライバル店が登場したあたりからちょっと不穏な空気になっていきます。

家族のことや自分の将来に不安や迷いを感じながらも、日常のささやかな喜びや旅先での思い出を大事にする彼女たちに、読んでいる私も気持ちを寄せてしまうのです。

ちょっとした小旅行に行ける気分になれる一冊です。

できたら、休日にゆっくり読むのにおすすめです★

コメント

タイトルとURLをコピーしました