「はらぺこあおむし」については、以前もとりあげたことがあります。前回はもちやすく丈夫なボードブックタイプでした。

「はらぺこあおむし」にはたくさんのバリエーションがあります。それだけ人気があって、親しまれているのでしょう。
日本語と英語で同時に読める絵本
今回は英語と日本語の両方で読むことができるタイプで、サイズが大きい・・・測ってみたら、22センチ×31センチ。ボードブックタイプのほうがやっぱり持ちやすいですね。
でも、英語と日本語の両方で読めるので、両方を味わいながら読めるのが嬉しい。同じ話でも、違う言語だとやっぱり感じが違います。
作:エリック・カール
翻訳:もり ひさし
偕成社 2006年
英語と日本語の時制について
読んでいて気付いたことが、英語の文章の時制が過去形であることです。日本語で読んでいたとき、てっきり原文は現在形で書かれているのかと思っていましたが・・・。
たとえば、おなじみの文章もこんな感じです。
But he was still hungry.
まだ、おなかはぺっこぺこ。Now he wasn’t hungry any more
もうあおむしは、はらぺこじゃなくなりました。「英語でもよめるはらぺこあおむし」
作:エリック・カール/翻訳:もり ひさし/偕成社 2006年
どうやら、英語の小説は過去形で書かれることになっているみたいですね。その点、日本語の時制はけっこう柔軟ですよね。
また、過去形は、過去に起こった出来事だから使うこともあれば、心理的にちょっと距離を取りたいから使うこともあります。目上の方に敬語を使うとか、丁寧にお願いごとをするとか。
日本語でも、現在の事実に反する希望を、「~だったらなあ」と、過去形を使って表現することは多いです。いわゆる反実仮想、英語でいう仮定法です。
「はらぺこあおむし」の日本語の翻訳について
ちなみに冒頭のシーンでは日本語で読んでいると、お月様が話しているのですが、英語の原文だと会話の文章がないので、淡々と説明している感じになっています。日本語のほうが温かみがある感じですね。
これは翻訳した方の感覚がとてもよかったのではないかな、と思います。
翻訳を担当したのは、もりひさしさん。エリック・カールの他の絵本も多く翻訳なさっています。経歴を見ると、短歌を詠まれる方でもあるとのことです。言葉への感覚が鋭い方なんでしょう。
あらためて絵本を見ていて、胴体がグリーンで顔が赤いあおむし、補色を使っていて、とてもインパクトがあります。大きな葉っぱの上にいるあおむしの顔の赤色がページのなかでいいアクセントになっています。
エリック・カールの世界は、このようにカラフルな色合いを引き立たせるための画面構成にも一工夫あり、その工夫が絵の力強さにつながっています。
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