「インサイド・ヘッド」ライリーの頭のなかのドラマと家族のドラマを楽しめる!

オレンジジュース アニメーション
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「インサイド・ヘッド」では、主人公はライリーという女の子でありつつ、実は頭の中の感情をつかさどるキャラたちのドタバタぶりをメインに描いたピクサーのアニメ映画です。

人間の女の子と、その人格を作っている脳内の感情たち、それぞれにドラマがあって両方が巧みに関わって展開していきます。子供向けのアニメでありつつ、同時に深みのある内容の映画です。

記事の前半で見どころをご紹介します。

記事の後半ではネタバレ有りのレビューとなっていますのでご注意ください。

『インサイド・ヘッド』

監督:ピート・ドクター/ロニー・デル・カルメン

出演: エイミー・ポーラー/フィリス・スミス/ルイス・ブラック/ミンディ・カリング/ビル・ヘイダー/リチャード・カインド/ケイトリン・ディアス

公開年:2015年

製作国:アメリカ合衆国

「インサイド・ヘッド」の見どころ

ハート型キャンディ

「感情」の特徴をいかしたキャラ化が巧み

人間の頭の中には、喜怒哀楽の感情を担当するキャラがいて、共同して人格を作っている、という発想が面白い。目の付け所がいいな、と感じます。

キャラそれぞれに、喜怒哀楽の感情の特徴を表していて、ビジュアル化がとても巧みです。

ヨロコビは黄色いドレスの活発な性格、カナシミは青い顔や青い髪で動きが遅い、ビビりは怖がりのやせっぽち、ムカムカは緑色の顔や髪で口が悪い、イカリは真っ赤で四角いフォルムで短気。

脳のなかには感情や考えを伝達するための操作卓があり、ヨロコビが触るとライリーが笑う、カナシミが触るとライリーが泣きだす、といった具合です。

感情キャラ同士のぶつかり合いと理解のドラマ

ヨロコビはとてもポジティブなキャラですが、その一方で、カナシミのネガティブな発想にはちょっとうんざりしている。最初は仲間として接していても、だんだん疎ましくなってしまう。

でもカナシミにはカナシミの役割がある、と気づいていく点がヨロコビにとっての成長です。

ライリーの家族のドラマにもなっている

ヨロコビが脳のなかの司令部からいなくなったせいで、ライリーがひねくれた性格になってしまいます。すぐに不機嫌になり、周囲に八つ当たりして、悪い態度を取ってしまうライリー。

親や幼馴染ともぶつかり、イライラしっぱなし。成長期の娘を持つ親の気持ちの複雑さや、扱いの難しさ、やがて家族が和解するシーンなどを見ていると、家族の映画としても十分な出来です。

「インサイド・ヘッド」ネタバレあり感想!

カナシミの存在意義がとても深い!

窓辺の植物
「インサイド・ヘッド」のなかでもっとも不思議で印象深いキャラはカナシミだろう、と思います。

カナシミは「ウジウジ悩むのが好き」といった根っからのネガティブキャラで、楽しい思い出に触れると色がブルーに染まって悲しい思い出に変わってしまいます。

ヨロコビが「悲しい思い出になってしまうから、カナシミは思い出に触ってはダメ」と言っているのに、つい触ってしまう。カナシミも触ってはいけないと思いつつ、自分でもコントロールできない。

カナシミのやっていることはまるで妨害のように思えるけど、11歳の子供が成長していくときに単に喜びだけではない、もっと複雑な感情の揺れを覚えていくありさまを表していると思います。

住み慣れた場所から新しい地域に引っ越したことで友達もいなくなり、新しい環境に緊張してしまう。悲しいことがあったときに落ち込む、気持ちが沈む、しばらく悩むといった感覚をライリーは知っていきます。

カナシミも自分がやっていることを「足手まといにばかりなって・・・」と分かっています。

ヨロコビはとても明るい性格だけど、正直なところカナシミをちょっと疎ましい、と感じている。

もっともその本音が出たのは、自分だけが先に指令部に戻ろうとしたシーン。結果として、途中で回想チューブが割れて、ヨロコビは記憶が消えていくゴミ捨て場の谷に落ちてしまうのですが。

記憶の谷に落ちたことで、おそらくはじめてヨロコビは涙を流します。悲しい・・・という感情は、ヨロコビというキャラでも感じる感情なのです。

カナシミを疎ましい、と思っているヨロコビが涙を流しているのは印象的なシーンです。

カナシミの存在意義は、古いロケットを捨てられて落ち込んでいるビンボンに寄り添っているシーンにはっきり出ています。

落ち込んでいる人の気持ちに寄り添う、悲しみに共感する、といった役割を担っているカナシミ。

人生には、ネガティブな面や悲しい出来事もいろいろと起こります。

カナシミは人生のなかで、いやがうえにもやってくる否定的な出来事やネガティブな発想を受け止めていく役割なのです。

いつかは他人の悲しみに寄り添う優しさにつながる感情にもなります。

自分で涙を流して、悲しみや絶望といった感情を知るヨロコビ。感情が別の感情を学ぶ、というあたり深みのあるシーンです。

いつか消えるイマジナリーフレンド・ビンボン

サプリメント

司令部に戻ろうとするヨロコビやカナシミが途中に出会う奇妙なキャラがいます。

かつてのライリーのイマジナリーフレンド(子供の想像上のともだち)だったビンボン。本作のなかでは一番、印象深いキャラです。

3歳くらいの子供には、想像の世界の友人がいるものです。一緒に空想のなかで冒険したり、探検ごっこしたり・・・。

ビンボンは綿菓子みたいなピンク色のボディで、見た目はヘンテコでも、ライリーの楽しいお思い出のひとつ。

でもすでに11歳になったライリーには現実の友達がいて、ビンボンを思い出すことも減っています。

ビンボンとは、子供時代にだけいて、いつの間にか記憶から消えていくキャラなんです。

イマジナリーフレンドという立場がもつ、本来的な悲しさを描いていて、とても印象深い。

子供の発達過程をたどりながらも、それが参考書的な説明に終わらず、キャラクターの魅力を丁寧に見せつつ友情と別れのドラマに重ねることで、観客をぐっとストーリーに引き込みます。

ビンボンの退場がヨロコビとカナシミ、そしてライリーの成長につながるという物語のダイナミズムは感動的です。

起伏にとんだヨロコビ一行の道中のなかでも、ビンボンが記憶の谷に落ちたヨロコビを励まし、古いロケットでなんとか谷から脱出しようとするシーンが一番好きです。

意を決した表情でロケットの後部から降りるビンボン。自分がロケットに乗っているとヨロコビがライリーの元に戻れないことに気づき、ライリーの人生のなかでの自分の役割は終わった、と感じて降りるのです。

ベタなシーンなんだけどしっかりしたつくり。こういうドラマを丁寧に作れるピクサーの腕の確かさを感じます。

ライリーの脳内のキャラといつもの生活の2つの側面のリンクが巧み

白いパズル

脳のなかの司令部でヨロコビが戻るまで、なんとか場をつなごうとする感情キャラたちの慌てぶりと、ライリーの学校や家庭での生活の展開が、上手にリンクしています。

2つの側面を同時に描きながら、バラバラにならないあたり、話の展開が巧みです。

たとえば、お母さんの眼を盗んで家出を試みるライリー。脳のなかの「正直の島」というライリーの性格の重要な一部が崩壊して、崩れていきます。

そのときにヨロコビたちが乗った「考えの列車」に、崩壊した島の瓦礫があたり、またしても帰ろうとする方法を断たれてしまう、というシーンがあります。

ライリーの日常の暮らしと、脳内のキャラたちのドラマが、バラバラにならずに相乗効果でドラマを盛り上げることに成功しています。

まとめ:「感情って不思議!」の感覚を見られる

ハート型のパズル
11歳の一人の女の子の暮らしと同時に、脳内の感情のキャラ同士のぶつかり合いや和解を描いている点で、とても面白いドラマに仕上がっています。

ヨロコビというポジティブなキャラが、最後にはカナシミの存在を認め、なんとか帰り着いた司令部のなかで協力するシーンには感動します。

同時に、人間の感情の複雑さや割り切れなさまで、記憶のボールの色でビジュアル化されていて、とても示唆に富んだストーリーだと思うのです。

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