「ラ・ラ・ランド」ビターな味わいのラストが印象深い!

ヤシの木と夕暮れ ラブストーリー
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アカデミー賞6部門を受賞するなど、大変に評判の良かった映画ですね。音楽も評価が高かったし、ミュージカル映画を見たいな、と思って選んだ1本です。

「ラ・ラ・ランド」の楽しみは、最初とラストシーンの対比にあった、と考えています。正直なところ、中盤はちょっとだるかったり、展開がベタすぎたりする点もあるのです。

でもラスト20分くらいの展開が素晴らしく、終わり方の余韻もたっぷりなので、観終わったあとの感覚としてはけっこういい作品でした。

このレビューも、最初と最後のシーンに注目して書いてみます。

ネタバレを含んでいるので、ご注意ください。

「ラ・ラ・ランド」

監督:デミアン・チャゼル

出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン

公開年:2016年

製作国:アメリカ合衆国

セブとミアの恋を音楽とダンスで描く

「ラ・ラ・ランド」に出てくる主人公2人はどちらも夢を追っている若者として登場し、お互いに生活のためにバイトなどでしのいでいるけど、どこかですっきりしない。いわば似た者同士のカップルです。

セブは古き良きジャズを愛しているけど、現代ではあんまりウケが良くない。理想を形にしたジャズバーを開きたいけど、お金がないので、なかなか実現しない。いっときは妥協して友人のバンドに入ってお金を得ようとします。

ミアは何度オーディションを受けても落とされている女優志望の女性。カフェでバイトをしながらオーディションを受けるけど、なかなか結果が出ない。

最初は反発していた2人ですが、お互いの夢を語り合っているあいだに、気になる存在になっていきます。

印象的なシーンとして、夜景をバックにして2人でダンスをするシーンがあります。わざわざ靴を履き替えて、踊りだすミア。

口では「タイプじゃない」みたいなことを言い合いながら、一緒に踊るシーンによって、内心では惹かれ始めていることを暗示しています。

2人の関係の変化を、セリフ以上にダンスや音楽で表現している点に注目すると、より楽しめる作品です。

「ラ・ラ・ランド」には批判したくなる点もある

「ラ・ラ・ランド」のなかで描かれる世界は、あくまでカップル2人の世界であって、批判したくなる点もあります。

セブとミアのいる世界は、とても視野の狭い世界です。周囲のひとたちはまるで背景のようで、存在感が薄い。また2人そろって、やりたい仕事へのこだわりが強すぎて、目の前の仕事を大切にできていない。

もちろん、監督はわかってやっている演出でしょうけど、ちょっともやっとしますよね。

セブとミアは夢を追う間のパートナーだったこと

クレヨンで描いたピンクのハート

話が大きく動くのは、2人の関係に亀裂が入ったときです。

ミアがもう女優の夢を諦めようとして、実家に帰ってしまったあとになって、大作映画のオーディションの誘いが舞い込む。もう自信を失いたくない、としり込みするミアを励まし、車で迎えに来るセブ。

もしセブがオーディションの話をミアに伝えなかったら・・・?オーディション当日、車で迎えに来なかったら・・・?

もしあのときセブがいなかったら、励ましがなかったら、その後のミアの女優としての成功はなかったでしょう。

でも、ミアとセブは結局は別々の人生を歩むことになる。人生の一時期に惹かれ合ってはいたけど、ずっと一緒にいるパートナーになる関係ではなかった、という関係。

切ないけど、必要な時間だったのでしょう。そして、2人の関係の終わりを描くためのエンディングは、とてもいいシーンになっています。

対になっている冒頭とラストの渋滞シーン

オーディションからさらに5年後に時間はとんで、あこがれの女優としての成功をつかんだミア。冒頭にカフェを訪れていた女優のように、今度はミアが注目を浴びる側にいます。

結婚して子供にも恵まれたミア。でも夫はセブではない。車に乗って夫婦で出かけた時に、渋滞につかまります。ラストの渋滞シーンは、もちろん冒頭の渋滞シーンと対応しています。

冒頭の真昼のハイウェイの渋滞シーンは、カラフルな衣装をまとった人々が次々に車から降りて、若いときの夢を歌いだすシーンです。未熟だけど、将来へ進んでいくためのエネルギーにあふれたシーンとなっていました。でも、歌い終わるとまた車に乗って、渋滞のなかを走るしかない面々。

冒頭から長い時間が流れ、今度は夜の道路での渋滞です。

冒頭では渋滞の車のなかにいる一人にすぎなかったミアですが、いまや渋滞からはさっと逃れて、側道を下りていく。すでにあのころとは違うこと、願っていた人生を手に入れている様子を伝えています。

セブの表情やしぐさに注目の別れのシーン

夕暮れに重なる時計

ミア達夫婦がLAでたまたま入った店の名は「SEB’S」・・・かつてミアがセブに提案したジャズバーの店名です。

広い店内や大人っぽい暗めの照明、雰囲気のいい店内はセブが長年、夢に見ていたジャズバーです。

司会をし、さらにピアノを演奏するセブ。ミアの姿に気づいて、視線が止まりながらも、ピアノの前にすわって思い出の曲を奏でる。

ピアノの流れる間、「もしセブとミアが結婚していたら・・・」という夢想が描かれます。女優として活躍するミア、ピアノを弾くセブ、そして家族。

もしかしたらあり得たかもしれない姿を描いていることで、それらがもう手に入らないという現実を印象付けます。

ピアノの演奏が終わって、店を出て行くときに振り返るミア。ミアを見ているセブの目は寂しそうだけど、同時に頷くのです。

それぞれに「自分が願っていた夢」はベストの(あるいはベストに近い)形で実現しているけど、夢を共有した相手とは離れていった・・・その過去を肯定するような頷きや表情です。

ラストシーンの出来の良さで、作品の印象はぐっと上がっています。

まとめ:ビターなラストに味わいがある!

ラストの解釈をめぐっては賛否があるようですが、私はいいエンディングだと思いました。ちょっとビターな感じのラストになっていて、人生にはこういう関係や時間もある、って納得がいくんです。

ラストまで見てから、その余韻や解釈を語り合うという楽しみもある作品です。

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