「レインマン」一台の車は兄弟になにをもたらしたのか?

車のミニチュア ドラマ
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「レインマン」は1988年の映画、ということで・・・・・・トム・クルーズ、若い!!

(ネタバレ含みますので、ご注意ください)

「レインマン」

監督:バリー・レヴィンソン

出演:ダスティン・ホフマン/トム・クルーズ/ヴァレリア・ゴリノ

公開年:1988年

製作国:アメリカ

トム・クルーズ演じるチャーリーはカーディーラーをやっているが、経営はまったく思わしくない。絶縁状態だった父親の訃報が入って、遺産目当てで故郷をたずねるが、存在すら知らなかった自閉症の兄に多額の遺産が渡ることを知らされる。

遺産目当てで強引に兄・レイモンドを連れ出すが、一緒にLAに向かう間に、チャーリーは忘れていた兄の存在を思い出すようになる。という展開になっており、登場人物は少なめ、ストーリーもシンプルな映画になっています。

遠回りしたことの面白さ

最初は飛行機でLAに向かおうとするも、レイモンドが嫌がるので車で移動する羽目に・・・。さらにレイモンドが高速道路を怖がるので、一般道を走って移動・・・。ずいぶんと時間のかかる移動になってしまいます。

仮に飛行機に乗ってスムーズに移動できていたら、チャーリーは兄との思い出を思い出すこともなく、親愛の感情が芽生えることもなく、単なる金目当ての行動に終わっていたでしょう。

最初は遺産をもらうことが目当てで兄を病院から連れ出すという、身勝手な人物だったチャーリーですが、旅の途中にもっとも変わったのは、チャーリーでしょう。

「苦楽を共にする」という言葉がありますよね。まさにLAまでの移動中に、まるで会話が成り立たない苛立ちや、思うように移動できない腹立ちをチャーリーは何度も味わいます。

その一方で、なぜ兄であるチャーリーが病院に入っていたのか、といった事実も知ることになります。とても幼いときに、いっときは兄と仲が良かったことを思い出したことで、チャーリーのなかの「愛情の薄い環境で育った」という記憶が更新されるのです。

後半には、レイモンドにダンスを教えるシーン、愛車を運転させるシーンなど、最初なら考えられないようなシーンを見られます。

車を運転してLAまで移動することは、いわば仕方のない選択であったし、ムダが多いかのような道中ですが、兄と弟の関係を育むというかけがえのない時間になっていきます。

印象的なシーンや演出について

印象的だったシーンをもう少し掘り下げてみます。

ラスベガス滞在の折、ホテルの窓際でチャーリーがレイモンドにダンスを教えるシーンがあります。

足の運び、目線の向け方など、細かく教えて、弟が兄にダンスの練習を教えるシーン。ダンスなんてしたことがないだろうレイモンドに、丁寧に教えるチャーリーの態度はとても自然です。

踊っている2人の様子を室内で映した後で、さらにホテルの窓の外から撮影しているカットが入ります。

窓の外から2人の様子を映す、という点がポイントになっている、と思います。

窓の外というのは、いわば客観的な視線になるわけです。ちょっと引いた視線を入れることで、兄弟の関係を、他者の視点でとらえ直すようになっています。

最初は単なる遺産目当てに利用する気持ちだったチャーリーの変化を、引いた視線を入れることで、より鮮明にしています。

また、レイモンドも、バーで出会った女性とのデートのためにダンスを覚えたいと言い出すなど、病院の外の世界に出たことで、今までとは違う環境への興味とか関心を持ち始めていることを示しています。

いままでは食事のメニューから視聴するテレビ番組まで、あらゆることがパターン化されていないとおびえていたのですが・・・。

2人の大きな変化をホテルの部屋の内側と外側から撮ることで、印象深いシーンにしています。

兄弟を乗せる一台の車

兄弟がLAまで移動するためにつかった古い車・ビュイックもこの作品のキーワードでしょう。思い入れの強い車で、チャーリーが一度だけのったことがあるコンバーチブルタイプの車。そして父親から遺産として受け継いだ車。

チャーリーはかつて、いい成績をとったご褒美に運転させてほしい、といったことがあるけど、父親からは断られてしまったという経験があります。一方のレイモンドは「運転を父に教えてもらった」「運転できる」と言います。

兄弟なのに、この差はなんだ、とチャーリーが思うのも無理ない部分です。このあたりの描写に、父親からの愛情の差みたいな部分がうかがえます。チャーリーとしては、嫉妬もあったでしょう。

レイモンドにはない多くのものを手に入れ、多くの充実した人生経験をしてきた。そう思いつつもチャーリーは、実は自分が一番欲しながらも手に入れられなかったものを、レイモンドが手に入れていたことに動揺します。

損得勘定だけではない、ふたりの関係の揺らぎを、一台の車が象徴しています。

カーディーラーというチャーリーの仕事も、幼少期からのこのコンプレックスが、無意識のうちに現れたものなのかもしれません。

父親からの愛情の象徴みたいな車にいっしょに乗ってLAに向かう、そしてその途中でチャーリーは兄・レイモンドとの関係を縮めていく、という点が話の核になっています。

まとめ

チャーリーとしては、故郷に戻ったのも兄を連れ出したのも、いわば財産目当てだったわけですが、結果としてはもっと大事なことに気がつく、というストーリーになっています。

レイモンドが、ほんの少しだけ変化する。いや、変化したように見えるのはチャーリーの思い込みかもしれない。

それでいながら、その変化には作品全体を肯定するような幸せさが満ちています。

この変化のささやかさこそが、映画全体を、上品にしかしはっきりと印象付けているといえるでしょう。

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