こんにちは。5月、いい天気の日が増えてきましたね。まだ外出しにくいですが、気持ちだけは明るくいきたいものです。
今回は映画「スクール・オブ・ロック」のレビューをアップしてみます。ハチャメチャで熱すぎるロックミュージシャンを主人公に、笑いながら音楽も堪能できます。
- 気持ちがスカッとするような楽しい映画を見たい
- 学園ストーリーが好き
- ロックが好き!
といった方におすすめできる映画です!
「スクール・オブ・ロック」
演出:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック/ジョーン・キューザック/マイク・ホワイト/ミランダ・コスグローヴ
製作国:アメリカ合衆国
公開年:2003年
「スクール・オブ・ロック」の見どころ
- ハチャメチャすぎる先生(偽)
- お金持ちの優等生にも悩みはある
- お堅い校長先生にも悩みはある
- 音楽を諦めた友人にも言い分はある
- みなそれぞれに悩みがある(笑)
- 音楽が気持ちを解放してくれる
厄介者にしか見えないロックミュージシャンが名門小学校に紛れ込むことで、なかなか言えない本音や悩みを言えるようになるほど子供たちや先生が解放感を味わえる、という点がこの映画の醍醐味だと思ってます。
主人公は熱血(死語だ・・・)バンドマンなだけあって、音楽や衣装にもロックの楽しみが満載になっています。
クリーム、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスなどロックの名曲が随所で使用されています。
ステージ衣装にもロックのネタが入っていて、観ていて面白い。ちなみにデューイのライブ衣装は、AC/DCのギタリスト、アンガス・ヤングと同じく半ズボンの制服になっています。
熱すぎる主人公・デューイはなぜ憎めないのか?
主人公は熱すぎるロックミュージシャン・デューイ。ロックに対する熱心さは本物なのですが、さっぱり売れない・・・。
身勝手なパフォーマンスのせいもあって、自分のバンドなのに、他のメンバーから愛想をつかされついにクビにされてしまう。同居している友人ネッドとその恋人からも、家賃を払えと迫られる。
仕方なく、お金目当てに教員になりすまして私立学校で臨時教員として働くことに・・・。

かなり情けないよね・・・。
覇気のない子供たちに音楽の才能があることに気がついたデューイは、言葉巧みにロックバンドを結成、猛練習を開始する。ロックバンドコンテストに出ようとするも、直前で正体がバレてしまい・・・。というストーリー。
主人公デューイがあまりにも身勝手すぎて、ちょっとびっくりするレベルです。子供より子供っぽく、さんざん身勝手なふるまいをしていているのですが、音楽に対して熱意があること自体は本当なので不思議と憎めないんです・・・。
子供たちにしてみたら、だらしのない妙な先生(実は偽もの)だけど音楽を通じて親にも言えない悩みを聞き出し、励ましてくれたこと自体が初めてと言っていい解放感なので、騙されていたと知ってもやはりデューイを憎めない。
デューイを信頼しかけていた校長にとっても、なりすましの偽教員だったことは大ショックだけど「お堅い校長」として疎まれ「失敗が許されないストレスフルな立場」にいる者の本音を聞き出してくれたのは事実なので、やはり憎めない。
鬱屈した気持ちを解放し、悩みを打ち明け、晴ればれとした気持ちをもたらしてくれたのが間違いなくロック音楽であり、デューイという奇妙なロッカーであることがはっきりわかっているから、どこかで責められないのでしょう。
お金持ちの子供たちが通う学校に紛れ込んだ、異分子でしかないロックミュージシャンがもたらす解放感とはなんなのか、笑って観ながらも、思わず考えてしまうのです。
悩みを言えるようになる生徒たちがかわいくなってくる!
お金持ちの子女が通う私立学校が舞台なので、一見すると何不自由なさそうで、恵まれた家庭環境にいるように思えます。
ただ、子供たちにも親には言いづらい悩みがあるようで、
- 見た目がイケていないからバンドなんて向いていない
- 見た目が可愛くないからコーラスやりたいって言いづらい
- 親にクラシックはいいけどロックはだめって禁止されている
- 成績はたしかにいいけど充実感がない
一見恵まれているような子供たちにも、それぞれにティーンネイジャーとしての悩みがあります。
親や普通の先生にはちょっと言えない悩みを、音楽を通じてならデューイに言える。ロックなら悩みや不満を託して表現することができる。
この解放感がバンドの結束につながっていくプロセスがあるので、先生には不適格なはずのデューイがだんだんと先生らしくなり、子供たちの気持ちをつかんでいってしまいます。
「もうしばらくロックに夢中になる時間が続いてもいいんじゃない?」といった気分になってしまうのです。
お堅い校長先生にも悩みはある
名門学校の校長先生にも悩みはあります。本当はひょうきんで、楽しい話もできる人物なのですが、同僚からはお堅い存在と思われ、保護者からのクレームにおびえている面すらある校長。
お酒を飲みつつデューイと音楽の話を始めたときの校長先生の自由そうな顔。その後、悩みを一気にまくしたてる校長。管理職にはあるよねー、こういう悩み。と思わず共感してしまいます。
「スクール・オブ・ロック」の中に出てくるキャラはそれぞれに、社会生活を送るための表の顔と、背後に隠している本音の顔の2つをもって登場しています。
- デューイは偽教師と熱すぎるロッカー
- 校長先生はお堅い校長と実は音楽好きで保護者を怖がる面もある女性
- 子供たちは期待を背負った優等生と悩みを抱えたティーン
ロックによって解放されることで、それぞれ抑え込んでいた背後の本音や素顔のほうがだんだん出てきて自由になっていくのです。
「スクール・オブ・ロック」のレビューを見ていると、「デューイのやっていることが無茶すぎるので、乗れない」という意見も見かけました。
本作を観ていて思うのですが、社会的にはあんまり役に立たないと思われている人間(本作ではデューイ)がもたらすハプニングから得る解放感が大きなポイントではないでしょうか。
予定通り、型通りの人生とはまたもう少し違った面から見たとき、人生はより楽しくなる。
ロックとの出会いによって生徒や校長先生たちが得る解放感とは、得難いものなのです。
夢を諦めた側の人物・ネッドの存在も大事
友人ネッドの存在も地味ながら、大事な役割を持っていると思っています。熱すぎるロッカーであるデューイに対して、同居人であるネッドはすでに音楽の道を諦めて、教員として堅実な生活を送っています。
「なんで音楽を簡単に諦められるのか」とデューイに言われてネッドは言います。
「(諦めるのは)簡単なもんか。ツキがないんじゃない。実力がないんだ」
音楽に限った話ではないのですが、芸術やアートの才能が自分にはない、と認めるのは本人にはつらいものです。
ネッドは世の中に山ほどいる、「自分の才能に見切りをつけて夢を諦めた人」です。
諦める人には、諦める人なりの考えや葛藤があっただろうことをネッドの存在が示してくれています。
デューイがロックに熱すぎるキャラであるのに対して、ネッドはすでに現実を受け入れたキャラなのです。
ネッドにはネッドの悩みがあったことを(軽めですが)描写していて、好感が持てるのです。
実はネッドを演じたマイク・ホワイトは、本作の脚本を担当しているそうで。
お人よしな感じもあるネッドですが、ネッドなりに音楽が好きという気持ちと現実の暮らしを両立させたエンディングがさらっと描かれていて、なかなか味わい深いキャラになっています。
夢と現実のすり合わせを考えるエンディング
最後のロックオーディションでの舞台は本当に楽しいシーンです。結果としては他のバンドが優勝して、デューイたちは優勝できないのですが、これはこの結果でよかったと私は思っています。
優勝目指してやってきたけど、実際には優勝できなかったことで、子供たちは「ロックは成績なんて関係ない」という教えを、かえってしっかりつかんでいるのですから。
「これからもロック音楽やバンド活動を続けたい」と子供たちから当然出てくる願いと、学校での勉強や生活を両立させる今後を描いたエンドロールにも楽しい工夫があります。
夢(ロック音楽を続ける)と現実(学校での勉強や生活のために稼ぐ)の共存、という結論にうまく落とし込んで終えるあたりもよく練られています。
まとめ:熱くて楽しい!気持ちもロックになれる映画
デューイのキャラがかなりクセが強いので、人によって好き嫌いがわかれると思います。
私はデューイのハチャメチャぶりこそが、「スクール・オブ・ロック」という作品を引っ張っていった力だと思っているのでいいのですが、人によっては「嫌いだよ」っていう人もいるでしょうね。
既存の枠組みを批判しつつ、笑いや楽しさに変えていってしまうあたり、デューイのハチャメチャぶりは、日本でいえば「寅さん」的なイメージもわきますね・・・。
世の中からは「役に立たない変な人」と思われている人が、実は人生での大切なことをちゃんと教えてくれていた。こう考えると、デューイの存在が実は大きなものになってきませんか。
映画「スクール・オブ・ロック」は、ロック(もう少し範囲を大きくすると音楽、アート)による鬱屈した気持ちの解放感を楽しむ作品です★
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