豪華キャストと音楽のすばらしさでヒットした作品が「グレイテスト・ショーマン」です。
19世紀に実在した興行師P・T・バーナムをモデルにしたミュージカルです。(実際のバーナムからさらに脚色されているので、あくまでモデルかな、と・・・)
「グレイテスト・ショーマン」の魅力は、大勢の人を魅了したミュージカルシーンです。印象に残ったシーンから、映画の魅力を考えてみます。
ネタバレを含みますので、ご注意ください。
「グレイテスト・ショーマン」
監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマン/ザック・エフロン/ミシェル・ウィリアムズ/レベッカ・ファーガソン/ゼンデイヤ
製作国:アメリカ合衆国
公開年:2017年
冒頭からミュージカルシーン満載
冒頭から華やかなショーを展開した、と思ったらその幻想は消えて、貧しかった子供時代への回想につながります。
店の外のガラスごしに、布地を抱える父親の姿を見ている少年時代のバーナム。大きな瞳が印象的です。
仕立て屋の息子として働いた日々、父親を亡くして孤児になったことなどが描かれます。
親を亡くして貧しさに苦しむバーナム少年に、リンゴを差し出してくれる人が、ちらっと出てきます。この人物もどこか社会から疎外されたような雰囲気です。
また、大人になってからサーカスを始めるために、親指トム将軍を誘いに行くときにも、机にはリンゴがありました。
リンゴは意外にも、サーカスを始めるきかっけのアイテムとして使われています。
「グレイテスト・ショーマン」の脚本はとてもシンプル
バーナムは失業をきっかけに、サーカスの事業に乗り出します。金目当てではあるものの、クセの強い人々を雇って、サーカスを始める。
意外なものを見たがる人々を引き寄せて、サーカスはヒット。さらに歌手として有名なリンドのアメリカ公演を手掛けて、さらなる成功を目指す。
しかし、夫婦関係は悪化、サーカス団との関係も悪化、リンドとの関係もギクシャクして失敗し、サーカスを火災で失ってしまう。
すべてを失ったものの、サーカス団のメンバーの励ましを受けて、もう一度ショーを行うことを決意する。
見せかけの急激な成功から、さらに成功を求めすぎて、失敗。そして本当に大切なものに気づく・・・典型的なストーリー展開です。
ベタ過ぎる内容でも、音楽やダンスの迫力・楽曲の良さでカバーしている、ともいえます。
「グレイテスト・ショーマン」印象に残ったミュージカルシーン
バーテンダーが光る「THE OTHER SIDE」
バーでフィリップとビジネスの交渉を行うシーン。最初はあんまり乗り気でなかったフィリップを説得して、サーカス団に誘うシーンです。
もうね、バーテンダーの名脇役ぶりが光っています!メインはバーナムとフィリップですが、バーテンダーがいい味だしています。
フィリップが床に落とした豆の殻をさーっと箒で履いていく、テーブルをさーっと拭いていくとか、キレのある動きがいい。
「(フィリップの)取り分は10パーセント」というお金の取り決めが、映画のラストで生きてくるので、その点もいい情報の提示です。
ジェニー・リンドの独唱「NEVER ENOUGH」
ミュージカルとはちょっと違うのですが、舞台にひとり立って歌い上げるジェニーの迫力があるシーンです。
公演の最中に、ジェニーを見つめるバーナムと、バーナムの妻の間になんとなく不穏な空気が漂いだして、今後の展開を予想させます。
また、同じシーンでは、フィリップとアンの距離が縮まりそうになるものの、結局は世間の評判が気になって、また距離があいてしまう・・・。なんだか切ないし、もどかしい気持ちを味わうシーンでもあります。
リンドの公演を成功させたことで上流階級の仲間入りをしたと思い、サーカス団のメンバーのことを雑に扱いだすバーナム。
ひとつの公演のなかに後半の展開を予想させるシーンがいくつも入っていて、興味深いシーンです。
フィリップとアンの空中を舞うダンスシーン「REWRITE THE STARS」
フィリップとアンはお互いのことが好きでありながら、世間体が気になって、踏み出せない。
今までに苦労を味わった経験の多いアンのほうが、世間からの厳しい風当たりを気にして、フィリップを拒絶してしまう。
空中ブランコ乗りであるアンらしく、ロープを使って上下の空間を行き来して、恋心を歌うシーンが印象的です。
サーカス団のなかの空間を広く使って歌うシーンは、動きの美しさもあって、インパクトのあるシーンです。
サーカスのなかなら、2人の関係はあまり悪く言われることもないだろうに、外に一歩出ればたちまちに悪く言われてしまう。
サーカスとは、あくまで限定された空間であり、一歩出れば世間からの風当たりは避けられない、ということを見せつけるシーンにもなっています。
まとめ:すべてを失っても残った音楽
バーナムが作り出したサーカス団は、いわば限定された空間であり、社会からは疎外された人たちの寄せ集めの集団です。
つまはじきにされている者ばかりであっても、そこを「家族」と呼び、拠点にしていく。世の中は恵まれた人や羨ましがられるような人ばかりでもない。
力強く歌い、踊っている生命力のあるダンスシーンには、観ているものを勇気づける興奮があります。
全体で104分とけっこうコンパクトですが、内容はとても充実したミュージカルです。観たひとがそれぞれに、自分にとってのお気に入りのミュージカルシーンを見つけることができるはずです。
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