「Mr.インクレディブル」窮屈な社会に生きるヒーローの復活

夕焼けと赤い雲アニメーション
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本当は8月上旬に続編にあたる「インクレディブル・ファミリー」を見に行きたかったなー。いいの、これから行くから。予習として前作「Mr.インクレディブル」を見てみました。

「Mr.インクレディブル」の鑑賞は今回で2回目です。かつて観たときに感心したのが、テンポのよさ。切り替えの速さやスピーディーな動きが面白い作品でした。

前作「Mr.インクレディブル」が作られてからもう14年もたっています。続編では技術面がさらに磨きがかかっているでしょうから、楽しみです。

今回は「Mr.インクレディブル」のレビューをアップしておきます。

「Mr.インクレディブル」

監督:ブラッド・バード

出演:クレイグ・T・ネルソン/ホリー・ハンター/ジェイソン・リー/サラ・ヴォーウェル/スペンサー・フォックス

公開年:2004年

製作国:アメリカ

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ストレスを抱えた元・ヒーロー

冒頭では、主人公が正義の味方・Mr.インクレディブルとして慕われていたものの、ヒーロー活動で助けた人から訴えられるなど、ヒーローたちが社会から批判される顛末を描いています。

その結果、Mr.インクレディブルの一家はスーパーヒーローとしての能力は持ちながら、その能力を見せずに、ひっそりと普通を装って暮らす状態になっています。

正義感が強く、いまもってヒーロー時代の気分を引きずっている主人公ボブ・パーはおおよそサラリーマンには向いていなさそう・・・。

異質な能力を持っているものは、社会に順応するのに苦労する・・・よくあるパターンです。それにしても、大きな体を折りたたんで小さな車に乗って通勤している姿は本当に窮屈そう。

もともと持っている能力とか個性を生かすことができない、社会のなかで目立たずに折り合いをつける、という難題を一家がみんな抱えている状態になっています。(末っ子のジャック・ジャックはまだだけど・・・)

ストレスのたまる生活、上司と対立して失業・・・という状態でもう一度、ヒーローになれるチャンスを提案されて、飛びつくボブ。長年の不満から解放されるかのような表情。

夫や父親として報酬を稼ぐ義務とか責任感もあるでしょうけど、なにより自分がまたヒーローになれる、という喜びに舞い上がっている様子です。冒頭での理不尽なバッシングを見ているため、ボブの喜びようを幼稚ともいえない。

「Mr.インクレディブル」が興味深いのは、社会から批判されて引退した元ヒーローが主人公、という点ですね。まだ能力は十分にあるのに、窮屈な社会のなかで、活躍の場がない、というフラストレーションや息苦しさ。

前半でしっかりと家族が抱える悩みを描いているので、後半のアクションに爽快感が増します。

ヒーローが悪役をつくりだしたという皮肉

Mr.インクレディブルに仕事を依頼してくるボスはいったい誰なのか、不明のままで進むため、ミステリアスな展開も興味深い。

そして依頼人の姿がわかると、それは冒頭であしらっていた少年・バディだった、という展開。

15年もの歳月のあいだに、かつてのスーパーヒーローは生活につかれた中年になり、さらにかつてのファンから恨まれる存在になっていた、という展開は皮肉なものです。

敵になったシンドローム(バディ)にも気の毒な面はあります。憧れていた人にぞんざいに扱われてしまったことで、性格がひん曲がった感じになっているので・・・。

結局はヒーローになれなかった少年時代の執念を、大人になってから歪んだ形でかなえようとしている。

シンドロームが決してヒーローになれないのは、ミラージュを人質にとられたときに、彼女の生命をなんとも思わないような発言をしたときで、すでに予告されているようなもの。

Mr.インクレディブルとシンドロームの違い、ヒーローの条件を浮き彫りにした、興味深いシーンです。

ヒーローとしての能力はあるんだけど、表向きには規制がかかっている主人公Mr.インクレディブと、ヒーローとしての能力には欠けているけど努力で這い上がってきたシンドロームの対立。冒頭での出来事がしっかりメインストーリーとして発展してきます。

エドナやミラージュも魅力的なキャラ

ミラージュというキャラはすごく魅力的なキャラになっています。最初はシンドロームの部下として出てきたけど、最後にはMr.インクレディブル側に味方してくれる。

敵側のキャラが裏切って、主人公サイドにつくのは定番の展開ですが、ミラージュの気持ちの揺れとか迷いを、細やかな表情や目線で描いていて、非常に面白い表現です。

もうひとり、エドナというファッションデザイナーも素晴らしいキャラです。マイペースで強引、ファッションに人生をかけていて、他人の話などろくに聞いていない。

新しく作ったヒーロースーツを披露するシーンは、横に移動する動きが面白いシーンになっています。

スーツ新調のときに「マントなし!!」といっていたエドナのセリフが最後には生きてくるなど、細かいつながりもうまく出来ています。

「Mr.インクレディブル」のちょっと残念なところ

全体としてすごく上手なつくりの作品なんですけどね・・・。難点を上げるとすれば、ヴァイオレットの描き方ですね。

好きな男の子とまともに会話できなくらい、内気でシャイなヴァイオレットが私はけっこう好きだったんだけどな・・・。

ラストでは好きな男子との会話をリードするくらい社交的になっていて、なんか複雑でした。あんなにハキハキ、笑顔ふりまけるような描写にまでしなくてもよかったように思います・・。

近いうちに劇場で「インクレディブル・ファミリー」を観てこよう、と思います。ヒットしているらしいので、楽しみです。

 

「インクレディブル・ファミリー」パワーアップしたヒーロー家族
「インクレディブル・ファミリー」は前作「Mr.インクレディブル」の魅力をいかしながら、パワーアップしています。ヒーロー活動の復活と家庭とのバランスという難題を、それぞれの面から巧みに描いた作品になっています。

追記:「インクレディブル・ファミリー」鑑賞後のレビューもどうぞ。

 

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