「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」無邪気なジャックのドタバタ劇

秋のリース(花輪) アニメーション
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「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」ティム・バートン原作によるクリスマス映画です。・・・やはりひと癖もふた癖もある作品です。

ティムバートンの作品では、以前レビューを書いた「フランケンウィニー」も、モノクロの世界での騒動を描いていました。そちらのレビューは以下になります。  

「フランケンウィニー」モノクロならではの楽しいホラー!
ティム・バートン監督作「フランケンウィニー」のレビューです。モノクロにこだわって作られた本作の魅力について考えてみました。

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の内容は時期としては、ちょうどいまくらい。ハロウィンからクリスマスへの間におこった騒動を描いています。ちょっと不思議で奇妙な世界を堪能できます!

ネタバレがあるので、ご注意ください。

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」

監督:ヘンリー・セリック

出演:クリス・サランドン(歌: ダニー・エルフマン)/キャサリン・オハラ/グレン・シャディックス/エド・アイヴォリー 

製作国:アメリカ合衆国

公開年:1993年

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のあらすじ

主人公はカボチャの王様という立場にありながら、パターン化したハロウィンに、どこかむなしさを感じているジャック。毎年、ハロウィンで主役として目立っていながら、しかし満たされない。・・・自らのアイデンティテイに悩む主人公・・・・・・。

偶然、クリスマスの世界を知ったことから、自らがサンタクロースになって子供たちにプレゼントを配ろうとする。

しかし、それはジャックがサンタクロースに成りすますことであり、クリスマスの世界の雰囲気にマッチしないプレゼントを配って、大混乱を引き起こすことになる・・・・。

ティム・バートンの世界を支えるディテール

ティム・バートン流の世界のリアリティは、細部にまでこだわった造形に支えられています。

あり得ない世界を描くときに、できる限りの想像力を駆使して、作りこみを行うことで、それぞれの存在感が出てくるのです。

クリスマス用に作られるプレゼントの不気味なこと・・・。あくまでハロウィンの世界の価値観で作ろうとするから、気味の悪い人形とかグロテスクなおもちゃになってしまう・・。

ハロウィンとクリスマス、この2つの世界がどれだけ違うか知っている観客からすると、ミスマッチぶりに顔が引きつりそうなんだけど、どこか滑稽で笑ってしまいます。

ジャックの子供っぽい思いつきから大騒動へ

松ぼっくりと電球

ジャックの「自分だってクリスマスを楽しみたい!」という思いつきは、子供っぽい思いつきであり、自分の行動がどんな結果を引き起こすかは考えていません。無邪気ないたずらのようであり、悪意はないけど、周りにしてみたらとんでもない迷惑になってしまう。

ハロウィンとクリスマスというまったく異なる2つの世界が、急に交わってしまうがゆえのハチャメチャぶりがこの作品の面白い点であり、衝撃なのです。

ハロウィンの世界は、徹底的にモノクロでちょっと気味の悪い滑稽な世界として描かれています。対になるクリスマスの世界は、カラフルで楽しく、明るい雰囲気に満ちています。

でも、最終的にはモノクロのハロウィンの世界が、充分に魅力のある世界として描かれています。主人公のジャックが、ついにハロウィンの世界に価値を見出せるように。

ハロウィンの世界は奇妙な驚き、子供時代のいたずら、悪ふざけなどちょっとワクワクするような思いつきの世界です。クリスマスの華やかさやきらびやかな雰囲気とは違うけど、子どものときに持っていた、無邪気に騒いではしゃげる世界です。

「隣の芝生は青い」でクリスマスの世界に未知の喜びを思い描いたジャック。けれど、ジャックにとって必要な物はちゃんと、ハロウィンの世界に存在していたのです。

主人公が新しいなにかを求めて旅立つけど、けっきょく求めていたものはもっと別に存在していた、と自分に気づく物語です。

メタ的視点をもつヒロイン・サリー

ジャックは気づいていないけど、自分に思いを寄せてくれているのが、サリー。フィンケルスタイン博士によって作られた人形だけど、自分で考え、行動する力をもつヒロインです。

サリーがいることによって、ハロウィンの世界にも心優しい人間(?)がいることになっています。

ハロウィンの世界にも、ジャックを慕って手伝ってくれる人たちは大勢います。サリーが他のキャラと違っているのは、結果として何が起こるのか、を案じているためです。

この全体を見通す視点はメタ的な視点ともいえます。作品全体の構造を知っているものの視点です。楽しいいたずらに夢中になっているハロウィン世界の住人たちのなかで、サリーだけが、ちょっと大人みたいな視点をもっています。

ジャックに不幸が起こることを予見して心配していたサリー。健気に心配して止めようとするところや、とらわれのサンタクロースを助けに向かうところなど、他人に対する優しさと行動力のある魅力的なヒロイン像となっています。

サリーのほうがジャックよりも、ちょっとお姉さんっぽい点があります。サリーに引っ張られるかんじで、ジャックが成長するかっこうになっています。

まとめ:ハロウィンとクリスマスの両方を楽しめるお得感

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」では全く異なる世界がぶつかる衝撃をコミカルに描いています。ハロウィンとクリスマスという二大イベントを一度に楽しめるお得感もあります。

クリスマスのドタバタコミカルなドラマとして、また主人公の成長を描いたドラマとして、とても優れたアニメーション作品です。

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