『シェルブールの雨傘』はミシェル・ルグランによる音楽やラストシーンが、大変に有名なミュージカルです。
60年代の名作で、ミュージカルとして、また恋愛映画として一度見ておくといいですね。特に切ないラストシーンが有名で、観ていて感情がこみ上げてきます。
『シェルブールの雨傘』
監督:ジャック・ドゥミ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ニーノ・カステルヌオーヴォ
製作国:フランス・西ドイツ
製作年:1964年
『シェルブールの雨傘』のあらすじ

まだ若いカップル、ギイとジュヌヴィエーヴ。お互いに夢中になっているが、ジュヌヴィエーヴの母親は二人が若すぎることを心配している。
しかも母親が営んでいる雨傘店は、経営が苦しい状況となっている。窮地に陥った親子を救ってくれたのは、宝石商のカサールだった。
ギイがアルジェリア戦争での兵役につくことになり、離れ離れになってしまう。ギイが帰郷したころには、ジュヌヴィエーヴはカサールと結婚して去ってしまっていた・・・。
数年後に、ガソリンスタンドで二人は再開する。
『シェルブールの雨傘』おすすめポイント
・約90分と大変コンパクト
・切ないラストが名シーン
・色彩がきれい
・構図が美しい
・音楽が有名
・ファッションがおしゃれで素敵
『シェルブールの雨傘』のファッションセンスがすごい!

色彩のセンスがすごくて、壁紙とか衣装のデザインがすごく素敵・・・・。全体的にカラフルです。
ストーリーだけでなく、ぜひ衣装のセンスや配色のセンスにも注目してほしいです。
妊娠中のジュヌヴィエーヴが着ているワンピース、すごくおしゃれ。ほかにもジュヌヴィエーヴの髪形も、最初はやや幼い感じの額を出した髪形から、ギイと離れた後は後ろで一つに結ぶ大人びたヘアスタイルに変わるなど、外見の切り替えがストーリーを補強することに一役買っています。
構図や色彩、ファッションなど画面の細部にまでわたって楽しめる映画です!
『シェルブールの雨傘』ラストシーンについての考察

妊娠中のジュヌヴィエーヴは結局、ギイの帰りを待たずに裕福な男性・カサールとの結婚を決断します。ジュヌヴィエーヴの取った行動を身勝手、と非難する人もいるかもしれません。
ただ、まだ結婚もしていないのに身重の状態で残され、しかも実家の店の経営が悪化しているとなると、現実的に考えてギイのことはあきらめる、という選択はやむを得ないものかもしれません。女性が仕事をして働くことが今よりさらに厳しい時代状況なら、なおのことでしょう。
ジュヌヴィエーヴの母親がギイのことを認めてくれない、2年待ったとしてもギイが無事に帰ってくるかどうかはわからない、など不安要因が多すぎて・・・。
そんなときに妊娠しているにもかかわらず「一緒に子供を育てましょう」と言ってくれる男性がいれば、カサールとの結婚という選択は、十分ありうることだと思います。
再会したときにジュヌヴィエーヴがきている衣装や髪形、とても豪華です。宝石商のカサールと結婚して、暮らし向きそのものは安定しているのかもしれません。
結婚後のジュヌヴィエーヴが本当に幸せかどうか、それはなんとも分からないです。カサールは悪い人ではないでしょうけど、本当に幸せと言いきれるかどうかはなんとも・・・。
この確定できない状況の描き方によって観客はすっきりしない面もありますが、観ている者に想像させる余地があって、良いと思います。
見ていて最も複雑な気分になったのは、お互いの子供の名前を教え合うラストシーンです。
ジュヌヴィエーヴとギイとの間にできた女の子にはフランソワーズ、ギイとマドレーヌの間にできた男子にはフランソワの名がつけられています。
まだ付き合っていたころに二人が考えた子供の名前を、別れた後なのに、お互いにそれぞれの子供につけている。心のどこかで引っ張っている、忘れ切っていないのは明らかですよね。
恋愛と結婚は違うので、いくら真剣に愛したからと言って、必ずしも結婚できるわけではないものです。ギイとジュヌヴィエーヴはまさにそんな関係なのです。
別れ際にギイはジュヌヴィエーヴに「幸せ?」と聞かれて、「ああ、幸せだ」と返します。もちろんその気持ちは嘘ではないでしょう。
妻子は大事だろうし、念願だったガソリンスタンドの事業も頑張っているし。ギイだって人生で欲しいものは手に入れたのです。
その一方で、失ったものもよくわかっています。ジュヌヴィエーヴとは若い時代に関わっただけで終わった関係なのですから。
ガソリンスタンドの中で交わすのは、一見すると当たり障りがなさそうな会話ながら、実はいろんな思いが去来しているのは伝わるので、観ている側も苦しい・・。観ていて胸が締め付けられる感じ。そこにM・ルグランのメインテーマがかぶさってきて、さらに切ない。
若い時の恋愛の純粋さとか甘さとか、誰にでもあるので、そこを掘り起こされて「・・・うー!!(涙)」ってなってしまうのです。
ストーリーそのものは定番でありふれた内容ですが、音楽や色彩、構図など映画の要素がうまくかみ合わさって、ラストシーンはとても切ないシーンになっています。
古典的な恋愛ミュージカルとしておすすめ!
90分程度とコンパクトで無駄なシーンが無いので、見やすいです。ストーリーだけでなく、全編にわたって、歌と色彩を堪能できます。
「確かに有名な作品だけどまだ見たことがない」っていう方がいたら、一度はご覧になるといいと思います★
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