「オリエント急行殺人事件」ブラナー監督のアレンジをレビューする

雪のなかの木サスペンス
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さて、たびたび映像化されている「オリエント急行殺人事件」。当ブログでも、先行する2作品のレビューをしてきました。

 

 

そして、今回取り上げるのはもっとも新しい2017年のケネス・ブラナー監督作品です。

結論から書くと・・・いままででもっとも「?」と思った出来栄えの「オリエント急行殺人事件」でした。ちょっと微妙な出来でしたね。

いいところと、イマイチだった点の両方をレビューしてみます。

ネタバレありなので、まだ見ていない方はご注意ください。

「オリエント急行殺人事件」

監督:ケネス・ブラナー

出演:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルス

製作国:アメリカ合衆国

公開年:2017年

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イマイチな点:ミステリーとして見ごたえがない

推理による謎解きはあんまり重視されていない

もともとのきっかけであったアームストロング事件について、あんまり詳しい説明がなく、複雑な人間関係も最後のダイジェストで明かされるという作りになっています。初めて見る人は戸惑ってしまいそうです。

1974年のシドニー・ルメット監督作では、冒頭にアームストロング事件のあらましを見せていました。このくらい分かりやすい演出のほうが混乱しないのではないかな、と思います。

全体として、本作では謎解きがあまり重視されていないですね。

ポワロが「灰色の脳細胞」を駆使して謎解きをして、複雑な事件を解明するプロセスが楽しみのひとつのはずですが、容疑者への追求はそんなに厳しくないです。

どちらかというと、容疑者たちはある程度追求されると、自分でやったことを自らしゃべってしまっているシーンが散見されます。ミステリーとしては、あんまり見ごたえがない原因になっています。

アクションシーンはなくてもよかった

ポワロがアクションをしているシーンが少しだけあります。もともと、あんまりアクションをするような作品でもないんですけどね。新しい解釈でしょうか。

いや、アクションが少し入るくらいいいんですが、できたらもう少し効果的に使ってほしいものです。

登場人物のイメージがイマイチ

すでに映像化されている前例があるので、ポワロという人物の造形は、本当に難しいですね。

今回のポワロは「朝食の卵の大きさにやけにこだわる潔癖症、パンに惹かれて厨房に潜り込むグルメ」といった人物であることを、冒頭に示しています。

ファンにとっては、それもひとつの大事な要素ですが、ミステリーであることを考えると、もうすこし深みのある描写を見たいものです。

ラチェット(カセッティ)という悪役の描き方も、あんまり掘り下げがなかったような・・・。

悪役を描くのは難しいものですが、単なる悪人であるだけでなく、気持ちの揺れとか、複雑な一面を見せてくれるとより印象的です。

イギリスのドラマ版「名探偵ポワロ」のほうが、神に助けを乞うなど、意外な一面がありました。

犯行シーンの描き方が感情的にすぎる

多数の人間がからんだ複数犯による復讐劇という点が、「オリエント急行殺人事件」のきわめて大きな特徴です。

ラチェット殺害のシーンは、妙に感情的になっているシーンがありました。でも、とても綿密な計画なので、もうちょっと淡々と実行するほうがいいと思いました。

良かった点:俳優陣の豪華さと映像のきれいさ

豪華すぎる俳優陣

これはオールスター映画と言われた、1974年のシドニー・ルメット監督作の影響もあるかと思います。スター勢ぞろいといった感じの豪華さで、画面がとても華やかです。

ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーなど、有名俳優がキャスティングされているので、俳優重視のファンにはいいかも。ジョニー・デップによるラチェットは、顔に迫力があって、出番は多くないけど、悪人そうな雰囲気はよく出ていますよ。

先ほどは、掘り下げが少ないと書いてしまいましたが、画面映えする存在感は強烈で、出てくるだけで悪人そう、という雰囲気はさすがでした。

映像がきれい

当たり前ですが、景色とかきれいですよ。列車が走るシーンも迫力はあるし、車内のテーブルとか食器とか、豪華そうな雰囲気は出ているし。

列車の窓ガラスごしに登場人物たちが歩くシーンなど、ひとつひとつの構図がちゃんと決まっていて、美しいシーンが多いです。

オリエント急行が雪で停車したのが陸橋の上

雪のせいで列車が陸橋の上で停止してしまう、という点はドラマチックなつくりにする効果はあります。

わざとらしい、という意見もありそうですが、ひとつの工夫だとは思いました。・・・怖い位置ですけどね。

最後のなぞ解きのシーンの舞台づくり

ラストで乗客全員が横一列になって座っている前でポワロがなぞ解きをする点は、芝居がかっているけど、ドラマチックではあります。もちろん、「最後の晩餐」のイメージです。

(屋外ですごく寒そうな場所なのに、あんまり寒そうに見えない、という点はツッコミどころですが・・・・。)

まとめ:ミステリーとしてもドラマとしてもやや中途半端

全体として、ミステリーとしては不十分、ドラマとしても掘り下げが足りない感があり、ちょっと中途半端に終わった感はします。

私はすでにほかの映像化作品を見て、全体のストーリーを知っているのですが、まったく知らない人が本作を見て、納得いくんだろうか・・・とちょっと疑問に思います。

ミステリー作品としては、やや疑問の残る出来栄えだと思いますが、今風アレンジの「オリエント急行殺人事件」にはなっていますよ。

おなじタイトルの作品を比較してみると、それぞれの良し悪しがはっきりしますね。私にとっては、イギリスのドラマ版がベストの映像化でした。

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