エラリー・クイーンの国名シリーズの第2弾。ニューヨーク5番街の高級百貨店のショーウインドーから遺体が発見された。亡くなったのは、百貨店の社長夫人。ちょうど同時期に失踪していた娘が犯人か、と思われる状況だったが・・・。
今回は息子・エラリーの推理の緻密さを楽しめる1冊。警察である父親はどうも警察内部の人事問題(!)で悩んでいたようで・・・。前回のような存在感があまりない。なんか息子の推理の補助っぽい・・・。
『フランス白粉の秘密』
著者:エラリー・クイーン
訳者:越前敏弥/下村純子
発表年:1930年
出版社:株式会社KADOKAWA
『フランス白粉の秘密』楽しめるポイント
エラリーと旧友ウィーヴァーの関係
エラリーは意外と友人思いっぽい。フレンチ社長の秘書であるウィーヴァーは、エラリーの昔からの友人。友人との会話などからエラリーの性格もわかります。
推理もいいけど、登場人物の関係性を楽しむなら今回は旧友との関係でしょう。前作では父親との関係性など、人物同士の描写が面白かったので、今後もその点は注目していきたいポイント。
ショッキングな事件の始まり
冒頭でいきなり事件がはじまり、ショッキングな形で遺体が発見される。最初に派手な事件を見せておいて、あとはかなり緻密で、やや地味ともいえる推理が続きます。
緻密な推理
小道具など、かなりの量で細かいです。私には整理しきれない・・・。いや、いいけど。
ラストの切れの良さを比べてみた!

同じ作家の別シリーズですが『Zの悲劇』におけるラストの展開にちょっと似ています。決定的な証拠がない状態で、消去法で犯人を割り出していく展開の衝撃が好きな方なら、気に入るはず。
ちなみに『フランス白粉の秘密』が1930年の作、『Zの悲劇』が1933年の作。3年後にさらに突き詰めた形でラストの展開があるので、読み比べてみると面白いかもしれませんね。
『フランス白粉の秘密』
気づく人はわりと最初の段階で犯人を分かってしまうのかな。私には無理ですが・・・。最後まで読むと、あぁ、確かにね。って感じになるんですが。
ひとつの室内に証拠品を関係者を集め、エラリーが独壇場で犯人を絞り込んでいく。
犯人の人物像を列挙する → 登場人物たちをひとりひとり、該当するかどうか当てはめて検証する
長々と説明し、最後には犯人が判明する。ラストに向かってグイグイ引っ張り、そして結論を示してスパッと終わる。切れ味が良いのです。
『Zの悲劇』
『Zの悲劇』は、ドルリー・レーンの活躍がいまひとつで、特に途中までちょっとだらだらっとした雰囲気が否めませんでした。
次のヒロイン・ペイシェンスへの橋渡し的な側面もあるのでしょうけど、ドルリー・レーンの活躍が見たい人には少し物足りない面もあったのです。
その点を挽回するかのような勢いで、ラストシーンで証拠が無いなか、消去法で犯人を割り出してしまいます。
大勢の人たちの中から、「○○さんは除外します!」と犯人から外していくときの緊迫感が最大の面白さでした。もちろん、最後に残った人が犯人です。結論までのドキドキ感が印象深い作品です。
ぜひ『Zの悲劇』レビューもお読みください!
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