クリスティ作品なのに評判がよくない「ビッグ4」を楽しむポイント

手紙と花束 ミステリー・サスペンス
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「ビッグ4」は、実は、アガサ・クリスティの作品の中でもあんまり評判が良くない作品です。

私は評判が悪いということを知らずに読み始めました。思いのほか楽しめたので、前もって評判を知らずに良かったと思ってます。

ポアロが好きな方は、緻密なプロットとポアロの冷静な推理力を楽しみたいと思うんです。

そのため「ビッグ4」という小説の中における、冒険小説のような展開はあまり好まれないのも無理はない、と思います。

またストーリーの展開が変化が大きく、ドタバタしている感じは否めないため、いつものポアロのスタイルに慣れている人には違和感があると思います。

今回の記事では、そんな「ビッグ4」の面白かった点をあえてレビューしてみようと思います。

 

ひねくれてるー

「ビッグ4」

著者:アガサ・クリスティー
翻訳:中村妙子
出版社:早川書房
発行年:2004年

ネタバレ有りなので、まだ見ていない人はご注意ください。

「ビッグ4」の批判されるポイント・いいポイント

チェス

「ビッグ4」が批判されるのは、次の点だと思います。

  • ポアロがドタバタと犯人を追うところ
  • いつもは特定の部屋に容疑者を集めて冷静な推理を展開するのに今回はないところ
  • 構成がやや粗いところ
  • 登場人物を生かしきれていないところ

私が読んでみて面白いと思ったのは、次の点になります。

  • 「ナンバー4」と言われる変装の名人との知恵比べ
  • ヘイスティングズが復活してきて活躍(!)
  • ポアロとヘイスティングズの友情を感じられる展開になっている
  • 冒険小説のようなドキドキ感があるところ

「ビッグ4」の批判点について

チェスの駒

「ビッグ4」を批判する人はあんまり面白くない、クリスティにしては雑な話、といったレビューを見たことがあります。確かにそういう点もあります。

私が特に気になったのは「ビッグ4」と言われる組織のナンバーワンといわれる中国人の人物が、結局、最後まではっきりとした正体を示さなかった点です。

最も目立っている敵役は、4人いる敵のなかの「ナンバー4」と言われる変装の名人です。

ナンバー4はいろんな変装をして判断を混乱させ、思わぬところでその変装の能力を発揮してくれます。

しかしその他の敵たちは、いまいち生かしきれているとは言い難く、敵を4人も出したのにちょっともったいないかな、と思います。

敵がどんな人物か、できるだけ魅力的に描くことも大事な要素なんですが、うまくいっていないと思います。

いつものポアロは、推理がはっきり固まると、容疑者や関係者を一室に集め推理を展開してみせます。

今回はそのような推理シーンで読者を魅了するということがないため、ポアロシリーズのファンにとってはちょっと辛い部分はありますね・・。

「ビッグ4」の面白かった点について

窓辺の本

しかし「ビッグ4」にも面白かった点はありますよ。

前作の「アクロイド殺し」において南米に移住していたヘイスティングズが復活して、イギリスに戻るところから話は始まります。

ポアロをびっくりさせようとするヘイスティングズと、まさにこれから南米に行ってヘイスティングズをびっくりさせようとするポアロとが、ちょうど入れ違いになるところでした。

前作では全く姿を見せなかったヘイスティングズですが、今回は、ポアロとの長年の友情を感じさせる作品になっています。

そのため、今回の作品はヘイスティングズのファンの方にとっては、楽しめる作品になっていると思います。

話の中においても、ヘイスティングズが機転を利かせてポアロにヒントを残したり、敵の策略に引っかかりそうになっているのをヘイスティングズが必死になってとめようとしたり。意外に活躍しています。

決して優秀な人ではないかもしれないけれど、素直で友達思いのヘイスティングズの性格がよく分かる展開になっています。

ポアロはポアロで、南米から帰ってきた友人・ヘイスティングズを心配し、気遣うようにしています。2人のコンビのファンにとっては、とても嬉しい話の展開ではないかな、と思います。

なぜ「ビッグ4」は評価が低いのか

花と手紙

元々「ビッグ4」は、雑誌に連載していた短編小説をつなぎ合わせて再構成された小説です。

そのためドラマ仕立てのように次から次へと新しいハプニングが起こり、それが起伏を生んでいることもあれば、やや散漫で雑な印象を作ってしまった部分はあります。

当時のアガサ・クリスティーは、夫との離婚や謎の失踪騒ぎ、作家として身を立てていくのかどうかなど、いろんな意味で岐路にありました。そのため、あまり落ち着いた気分で作品を執筆するといった状態ではなかったのかもしれません。

アガサ・クリスティーの業績を知っている人からすれば「ビッグ4」は必ずしも高い評価を得る作品ではないのも無理はありません。

ただ一人の作家が、初期の頃にはこんな意外な作品も書いていたのか、と新鮮な気持ちを持って読むことも悪いことではありませんよね。

まとめ:冒険小説と割り切って読もう

冒頭で南米に旅立とうとしてやはりロンドンに引き返す急な展開、変装の名人・ナンバー4との対決や、次々に起こる新しい事件など、 起伏のある展開を楽しんでみてはどうでしょうか。

推理小説というよりはバディものとして読むと、けっこう楽しめる面があります。

「アクロイド殺し」では姿を見せなかったヘイスティングズが復活したことですし、この次の作品も楽しみに読んでみたいと思います。

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