夏なのでちょっと怖い話でも・・・と思ってみたら、意外と切ないお話でした・・。

選択ミスでは・・?
「ティム・バートンのコープスブライド」はティム・バートン監督らしい、おとぎ話のアニメーション映画。
全体的に、とてもいい出来です!キャラや背景の色合いやライティング、話の展開や伏線の回収まで、素晴らしい!
- ちょっと変わったラブストーリーが見たい
- ティム・バートンの世界が好き
- ちょっとホラーっぽいキャラが平気(っていうか好き!)
という人におすすめです!
『ティム・バートンのコープスブライド』
監督: ティム・バートン/マイク・ジョンソン
出演: ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/エミリー・ワトソン
製作国:アメリカ合衆国・イギリス
公開年:2005年
「ティム・バートンのコープスブライド」あらすじ
結婚式を明日に控えた、気弱な青年・ヴィクター。相手は貴族の令嬢・ヴィクトリア。お互いを知らず、リハーサルの日に初めて顔を合わせる二人。でも、二人の雰囲気は意外とよさそう。
式のリハーサルでは誓いの言葉をうまく言えず、しどろもどろのヴィクター。森の中でひとり、誓いの言葉を練習するヴィクターは、ちょうど地面にあった木の枝と思しきものに指輪をはめてしまう。
・・・いきなり土中から女性の遺体が復活し、「(プロポーズを)お受けします」と言うのだった。死後の世界の住人・エミリーと結婚する羽目になったヴィクター。果たして生者の世界に戻れるのか?
「ティム・バートンのコープスブライド」奇妙な三角関係の魅力!
「ティム・バートンのコープスブライド」は、いわば三角関係になってしまった男女のラブストーリーです。
主人公のヴィクターは、結婚に対してやや恐れを感じている、気の弱そうな青年です。根はやさしいらしく、絵画や音楽のセンスがあって、きれいなものが好きなのでしょう。ちょっと優柔不断な感じもするのですが、次第に自分の意思で結婚や結婚相手に向き合おうとするのです。
ヴィクター以上に魅力的なのが、2人のヒロインです。エミリーも、ヴィクトリアもそれぞれに素敵なキャラです。
特にエミリーは見た目はややグロテスクなのですが、ラストになるにつれて、どんどんかわいく思えてきてしまいますよ。
ヴィクターとヴィクトリア
結婚の前日に顔を初めて知る二人。ま、親同士の都合で決まっている結婚ですからね・・・。親同士はけっこう強欲そうなキャラですが・・二人は両想いになれそうな様子。
初めて出会うときのヴィクターがピアノを弾いているシーン、ちょっと憂いや恐れを含んでいて、とてもいいシーンだな。
お互いに親が決めた結婚ではあるけれど、内心ではちゃんと愛し合える相手を望んでいたり、今の生活に窮屈さを抱えていたりする点では似たもの同士。
はじめはヴィクターもヴィクトリアもまるで生気のない世界で、暗い顔をしているのですが、だんだんと生き生きした表情を見せ始めます。
困難を越えようとするプロセスのなかで、どんどん表情がよくなっていくヴィクターやヴィクトリアを見ていると、不器用でも応援したくなってしまうのです。
ヴィクターとエミリー
気の毒な理由で結婚できず、死者となってしまったエミリー。エミリーのビジュアルは、最初はちょっと怖いかもしれませんが、見ている間に慣れてきますよ。(キャラのビジュアルが生理的に合わない、っていう人もいるかもしれないけど)
むしろかわいい面が目立ってきて、切なくなってしまうくらいです。
エミリーの印象深い魅力は、すでに死んでいるにもかかわらず、一途に恋をしたり、嫉妬したりする点です。
自分の感情に素直で、思わず涙を流すあたり、見ていて気の毒にもなり、なんとか幸せになれるといいのだけど、と見ている間に思ってしまうのです。
ヴィクターは、ヴィクトリアが他の男性と結婚すると知ってから落ち込み、しかしエミリーとの結婚を前向きに考えるようになります。このあたりの心境の変化はどうなんだろうな・・。
結婚というものに恐れがあったヴィクターが、これからを考えて、死後の世界で暮らすことを決心したと考えると、本人に決断力がついてきた、とも評価できます。
でも、エミリーは、ヴィクターと本当に結婚寸前まで話が進んでいる段階で、やっぱり自分がやっていることはおかしいと気づいて、最後に自分で大きな決断をします。
エミリーの潔さが、この作品を見ごたえのあるストーリーにしているんです。
諦める、断念する、といった行為がどれだけ大変なのか、エミリーを見ていて、しみじみ感じるのです。
エミリーの最後は(仏教的に言えば・・・)成仏した、ということになるんでしょうけど、とてもきれいですが切ない感情を覚えるシーンなのです。
エミリーとヴィクトリア
いわばライバル同士の二人。一度、ヴィクターが地上に戻ってきて、まず訪れたのが婚約者のヴィクトリアの家。ヴィクターに実は婚約者がいたことを知って、嫉妬して死者の世界に連れ戻ってしまう。自分の感情に素直なあたりが、エミリーの可愛い点です。
ヴィクトリアは最初は親のいいなりですが、ヴィクターを取り戻すために行動力を発揮していくあたり、芯の強いヒロインです。
それぞれにヴィクターを一途に思っているので、2人ともヒロインとしての素質は十分なのです。
最終的には、エミリーはヴィクトリアのことを受け入れて、自分が身を引く決断をするのですが、それまでの苦悩ぶりや嫉妬などを見ているので、エミリーの決断には感動してしまうのです。
2人ともそれぞれに魅力あるヒロインなので、どちらのキャラも好きになってしまいます。
生者より元気?死後の世界が楽しそうで驚き!
生きている人間の方が陰鬱で、暗い顔をしているのに対して、死者の世界のほうがカラフルで明るい・・・。仲間思いで人情もあるし。
死んだあとなので、もう家の没落とか資金繰りとか、あれこれ考えなくてよくなったためか、けっこう明るく騒いでいる死者たち・・・。

意外と楽しそうでびっくり
このあたりにも、人間社会への皮肉めいたものがにじんでいて、なかなか味わい深い演出ですね。死んだあとの世界を実に楽し気に描くことで、人間の世界を強烈に照らし出すようになっています。
映画の冒頭にはヒントがいっぱいなので注目!
冒頭には、作品のテーマが提示されているものですが、オープニングには、ストーリーのポイントも満載です。
ヴィクターは一匹の蝶の絵を描いてから、ガラスのケースを取って、外に逃がしています。
これは当然、ラストシーンでエミリーが蝶になってはばたくシーンの予告であり、同時にガラスのケースに入っていた(親の言いなりの人生であった)ヴィクターやヴィクトリアの解放も予感させます。
ちらっと犬と少年の写真が映ることにも注目です。かわいがっていた犬・スクラップスの生前の姿も、冒頭でちゃんと出ているんです。
話のヒントになる細かい情報もちゃんと出ているので、冒頭に注目しつつ、見てみるといいですね。
まとめ:食わず嫌いはもったいない!切ないファンタジー
製作に時間がかかるストップモーション・アニメなので、約77分とコンパクトな作品ですが、内容が練られていてとてもきれいな映像です。
大人のためのホラーファンタジーと言ってもいいので、できたらキャラのデザインで食わず嫌いせずに見て欲しい1本です★
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