映画「ショコラ」チョコレートが築く素敵な関係

赤い蔦の葉っぱ ラブストーリー
この記事は約5分で読めます。

バレンタインを意識して、2月は恋愛映画やチョコレートにからんだ作品を取り上げてみます。

「ショコラ」は小さな村でチョコレートショップを開店した母娘の話です。映画に出てくるチョコレートがとてもおいしそうで、こんなお店があったらちょっと入ってみたい、と思ってしまいます。

チョコレートが好きで、楽しい映画を見たい人におすすめの作品です。

「ショコラ」

監督:ラッセ・ハルストレム

出演: ジュリエット・ビノシュ/ジョニー・デップ/ヴィクトワール・ティヴィソル/アルフレッド・モリーナ/ジュディ・デンチ

製作国:アメリカ合衆国

公開年:2000年

「ショコラ」のあらすじと見どころ

舞台はフランスの田舎の村。小さな教会を中心として、厳しい戒律を守りつつ暮らしている人々がいます。そんな村に、ある母娘がやってきて、新しいチョコレートショップを開きます。今までに見たことがないような雰囲気のお店に、村の人たちはびっくりします。

でもヴィアンヌが作るチョコレートは、一口食べるとすっかり病みつきになるおいしさ。気に入ってくれる村人もいますが、戒律に厳しいレノ伯爵は渋い顔。村のなかで浮いた存在である母娘と、伯爵との対立は激しさを増していきます。

あらすじはこんな感じです。村を舞台に、母娘とレノ伯爵という、立場が正反対の二人を中心にしてドラマが進むので、登場人物は多いものの、まとまりのいい作品です。

村のなかは古いしきたりや伝統を重んじるため、外部から移ってきた母娘はいわばよそ者の扱いです。教会のミサにもいかず、断食のときにチョコレートショップを開店するなど、最初から村の雰囲気に合っていない。

ヴィアンヌが着ている衣装も、村の人たちに比べるとカラフルで暖色系が多めです。村の人間ではない、というイメージを衣装でも伝えているのでしょう。

母ヴィアンヌは奔放でおおらかな性格。それゆえに村の人たちとは対立するけど、はたしてその関係がどうなるのか。周りから浮いた存在になっていますが、チョコレートづくりで街の人との交流をはかります。

「異質な人が入ってきたときに、はたしてどう対応するのか」今日にも通じるテーマなのですが、あまり重い雰囲気にはならず、楽しくみられる映画となっています。

ここからネタバレあるのでご注意ください。

レノ伯爵はなぜヴィアンヌを嫌ったのか

レノ伯爵は、自分にも他人にもとても厳しいけど、一方で奥さんが家を出て行って、もう帰ってこないという心配を抱えています。潔癖で完璧主義者で、戒律を守ることを絶対の正義のように信じているレノ伯爵。

ルールに従わないよそ者である母娘には、けっこう冷たい存在になっていきます。レノ伯爵の潔癖さは、自分とは違う他者を受け入れる余裕がない人のようです。

奥さんが出て行ったことを受け入れられないために、余計に戒律を守ることにこだわっている感じもします。

また、欠陥があることが許せないタイプなので、ヴィアンヌたちのような奔放さは受け入れがたいのでしょう。

周りが次第にヴィアンヌを受け入れてチョコレートを食べるようになっていっても、レノ伯爵は最後まで抵抗しようとします。そしてついに決心して、ある行動を取るのですが・・・・・。

レノ伯爵が、出て行った奥さんのドレスを取りだし、ハサミでザクザクとカットするシーンがあります。小さなシーンですが、押さえつけられているストレスとか鬱屈を見るシーンです。

こっけいなほど戒律にこだわり、いつも不機嫌そう。石頭な人物ですが、どこか憎めない部分があります。

おそらく不器用で、柔軟さがなくて、でも同時に欠けた部分を埋めようと必死になっているような面があるせいです。

ついにレノ伯爵もチョコレートを口にして、変わっていくあたりでストーリーは終わります。

自分にも他人にも厳しかったレノ伯爵。他者を受け入れていくためには、自分の根幹の部分が揺らぐため、どうしても抵抗を感じたのでしょう。

教会の若い神父はロックミュージックが好き、などちょっとかわいい設定になっています。最初はレノ伯爵のいいなりだった新米神父ですが、最後には立派に自分で説教を考えて語るようになります。レノ伯爵の変化は、若い神父にも大きな変化をもたらしたのです。

村の人が解放されていくプロセスとチョコレート

チョコレートケーキ

チョコレートを食べているうちに、仲良くなり、だんだんと気持ちが通じる関係になっていく。話の軸になるのは、村の人たちが変化してくプロセスです。

チョコレートショップの大家であるアルマンドは、気難しいタイプに見えますが、実は娘や孫との関係がうまくいっていない悩みがあります。ヴィアンヌのショップを通じて、会いたかった孫に会える機会を得るアルマンド。

アルマンドの誕生日祝いのパーティーは、この作品中での大きな節目のシーンです。

気難しいアルマンド、夫の暴力から逃れてきたジョゼフィーヌ、街からは嫌われてきたルー、浮いた存在のヴィアンヌ母娘、そして町の住人といった人々がおいしい料理を食べ、船上でいっしょに踊り歌う。

アルマンドの娘・カロリーヌはけっこう堅物で、パーティーの様子を遠くから見ているだけですが、母の姿を見ていて、どう思ったのでしょう。

厳しすぎた自分の元を去って、アルマンドと一緒にいる息子・リュックを見て、なにか敗北したような気分になったのかもしれません。

アルマンドを演じるのは、大御所のジュディ・デンチ。頑固そうで、実は繊細な気持ちを持っている老女を実にチャーミングに演じています。

また、最初は変人扱いだったジョゼフィーヌ。夫から逃れてヴィアンヌのお店で働くにつれて、性格が開放的になり、次第にチョコレート作りの技術を身に着けていきます。

そのうち自立した女性としての芯の強さを発揮しだすので、このあたりも見ていて、解放感を感じるところです。

くじけそうになっているヴィアンヌを、今度はジョゼフィーヌが励ます側に回るあたりも、友情を感じさせる展開です。

まとめ:チョコレートをつかった童話的ストーリー

「ショコラ」はチョコレートという美味なお菓子を通じて描かれた童話のようなストーリーです。

しかし、テーマはけっこう重く「異質なものを排除するのか、それとも受け入れていくのか」です。

これはどの場所でも起こりうる問題を、ある村を舞台にして描いた群像劇です。舞台は小さく、時代は昔であり、のどかな村のなかの小さな話です。その限定された空間のなかで起こる小さなドラマを積み重ねて、村のなかの変化を描いています。

チョコレートがどれもおいしそうで、ヴィアンヌが相手の好きなチョコレートをあてていく、という演出もちょっと儀式っぽくて面白い。

他者を魅了するアイテムとして登場するさまざまなチョコレート。観ていてほんとうに食べたくなる気持ちにさせてくれますよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました