「ローマの休日」における出会いと別れを考えてみた

クローバー ラブストーリー
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今回は、名作と名高い「ローマの休日」を取り上げてみます。

ものすごい名作ほど、レビューには困るものです。いまさらこんな有名作品のストーリーを追っても仕方ないので、印象的だったシーンを掘り下げてみたいと思います。

ちなみに、「ローマの休日」は英会話の教材としても使われています。

「ローマの休日」のセリフの音読で英会話を身に着ける!
好きな映画を使った英語の学習はやはり楽しいものです。「ローマの休日」のセリフを使って音読しながら、英会話に役立つ表現を身に着けることができます。使ったテキストもご紹介します

 

ローマの休日

監督:ウィリアム・ワイラー

出演:オードリー・ヘプバーン/グレゴリー・ペック/エディ・アルバート

公開年:1953年

製作国:アメリカ

 

アン王女とジョーの出会いについて

記者であるジョーとアン王女の出会いのシーンは、酩酊状態(実は睡眠薬のため)のアンにジョーが四苦八苦するというシーンになっています。

コミカルで、オードリー・ヘプバーンの魅力あふれる演技が見ものですが、実は物語的にも大きな意味を持っています。

人生の最も情熱的な一日の開幕である出会いのシーン。

もしここで、初めから二人が十分に意思疎通ができる状態であれば、そのときに全面に出てきてしまうのは、スクープをモノにしようというジョーの下心か、もしくは身分を隠して一民間人を都合よく使おうというアンの打算になってしまうでしょう。

アンを前後不覚にすることで、文句を言いながらもアンのことを気遣い、無償の親切を行うジョーには、主人公としての資格が与えられます。

船上パーティーでの気持ちの揺れ

船上パーティーのシーンはロマンティックなシーンと、とてもコミカルで楽しいシーンとがあって、非常にうまく作られたシーンです。

ジョーとアン王女は一緒にダンスを踊っていることで、お互いに惹かれていることを確かめ合っているようです。新聞記者として特ダネを追うのか、それとも・・・といった気持ちの対立が極まってくるシーンです。

もちろん、踊っているアン王女の姿をこっそり撮影しているし、お金のことも考えると、スクープは欲しいでしょう。ジョーという人物の気持ちの揺れが高まってくる舞台です。

船上パーティーでの2人の会話から、アン王女はジョーの目的に気づいていたのかな、という疑問もわきます。もちろん途中で身分証明書をみているシーンがあるので、新聞記者ということはなんとなくわかってはいるんでしょう。

1日中つき合ってくれたジョーに対して「本当にやさしいのね」「自分のことを考えずに」とか言っているけど、妙にくどい言い回しです。

本当はもう相手の立場とかねらいを知っていて、もっと別のことを言いたいのかもしれない、でも聞けない、といった心理から出たセリフかもしれません。

2人して立場や身分を隠しているので、枷となってしまって苦しい。近づいてくる別れに向かって、気持ちの揺れが大きくなってくる場面です。

アン王女の身柄をとらえるためにやってきた黒ずくめの男たちとの乱闘シーンはとてもコミカルで、他の作品でパロディにも使われています。

アン王女は追手から逃げるときに、ジョーを追って水中に飛び込んで逃げます。一緒に川岸に上がることで、いわばふたりは仲間、共同体としての関係がもっとも高まっていると言えます。

そしてもっとも気持ちが高まったときに、別れの瞬間がやってきてしまうのです。

ラストの記者会見のシーン

名シーンとして有名な記者会見のシーンは、表向きには一記者と王女のやり取りなのだけど、今までのプロセスを知っている観客にとっては、切ない感情あふれるシーンとなっています。

またサブキャラとしてとても魅力的なのがカメラマンのアービング。隠し撮りしてきた王女の写真を「ローマ滞在の記念」として渡しています。

たった1日だけの貴重な思い出を王女は写真という形で残せるし、大事な思い出を外部に漏らすことはしない、という態度を表していて、アービングという人物が、清々しく魅力的な人物になっています。同時に「これだけ大きな騒ぎになって大丈夫かな」という観客の心配を上手に払拭してくれます。

ラストシーンでひとり記者会見の会場から去っていくジョーの姿と、その時の足音の響きがとても印象的です。

広い会場と、ひとり余韻にひたりながら去っていく、その動きをゆっくり見せることで、たった一度のめぐりあわせがいま終わっていく、ということを観客も受け入れていくことになります。ジョーの退場によって、映画はエンディングを迎えます。

まとめ:ずっと愛される名作

あっという間に終わる、身分違いの恋。その出会いと別れは、とても工夫のある描き方になっています。

ローマという舞台の魅力をぞんぶんに生かしながら、いつまでも忘れられないような経験を描き出しています。

観ているもののなかに、憧れをかきたててくれる作品として、長く愛されるのもよくわかります。

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