「ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜」は、私も前から大好きなアードマンアニメーションの作品です。ストーリーの途中の小ネタの挟み方が巧みで、笑えるシーン満載です。
- 羊が好き!
- 動物が出てくる楽しい作品がみたい!
- クレイアニメーションが好き!
という人に特におすすめです。
「ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜」
演出:マーク・バートン/リチャード・スターザック
製作国:イギリス
公開年:2015年
後半でネタバレあるので、ご注意ください。
映画「ひつじのショーン」見どころと巧みなキャラ設定
あらすじとしては、牧場での毎日の暮らしに飽きてしまった主人公・羊のショーンの発案で、牧場主を眠らせて、たまには羊たちも休日を過ごそうとすることから始まる大騒動を描いています。
眠っている牧場主を乗せた車(?)が坂道を下って都会へ行ってしまうハプニング発生。大都会に迷い込んだ牧場主を追って牧羊犬・ビッツァーと羊たちは町に向かいます。
動物収容センターのトランパーの追及をかわしつつ、記憶喪失になってしまった牧場主をなんとか牧場に戻そうと奮闘します。
ストーリーとしては牧場⇒大都会⇒牧場に行ってまた帰ってくるという、単純な展開。
しかし、もう一度牧場に戻ってきたときには、前よりも今までの暮らしのかけがえのなさを共有できている、というしみじみした味わいがあります。
驚くのが、ショーンは意外と頭がよくて、アイデアマン。トラブルも起こすのですが、好奇心の強いひつじ。意外と仲間思いで、主人のことも心配する優しさがあります。
犬のビッツァーは主人に忠実で仕事熱心だけど、骨には目がないという犬らしい性格で、ちょっと笑える。
牧場主はややぶっきらぼうで毎日ワンパターンなんだけど、牧場でのひつじの羊毛をカットする技術が、思わぬ形で町で生きることになる。
トランパーは動物になにか恨みでもあるのか、執拗なまでに動物の捕獲に執念を燃やします。
人間のキャラでもセリフはほぼなく、(一応すこししゃべっていますが意味のない音声にすぎない)動物たちの表情や動き、仕草、そして伝わってくる感情というシンプルな良さがあります。
すべてのキャラの性格や動きに無駄がなく、隙のない作りになっています。85分とコンパクトな映画ですが、キャラにも演出にもムダのない、素晴らしい出来栄えです。
「ひつじのショーン」の笑いについて
人間社会のルールや勝手がわかっていない動物たちの戸惑いや失敗、勘違いなどをコミカルに描いていることで、おかしみを感じさせます。
例えばお腹が減ってレストランに入ったものの、店のメニューの扱いがわからず、羊だからいきなり紙でできているメニューを食べてしまうシーン。
人間社会ではあり得ないことを羊たちが平然とやるから、ミスマッチを感じて笑ってしまう。
別にそれは羊を馬鹿にしたいやな笑いではなくて、人間社会のなかに本来は入らないはずの羊たちが入り込んでくることでかき回される秩序とか常識を笑うことになると思うのです。
人間と家畜。本来、分かれているはずの世界が交差することで生じるドタバタぶり。動物たちはいたって真剣なんだけど滑稽という笑いです。
敵役・トランパーの見事なキャラ
動物の捕獲に執念を燃やすトランパーが、本作の大きな魅力になっています。
初登場のシーンからして、実にかっこいい描き方です。アップで見せる手や捕獲用の器具、素早く動物をとらえる仕草やちょっと自分に酔っている様子など。
トランパーというキャラの特徴をしっかりと見せています。
女性(実は女装した羊なんですが・・・)にはちゃっかり紳士風の態度を取る様子や、動物に出し抜かれて激怒するさまなど、どこか抜けている部分もありながら、見事な敵役を演じています。
最後まで執拗にショーン達を追いかけてくる執念深いトランパー。ラストのトランパーはけっこう怖くて、たしか私が映画館で鑑賞したときには劇場内の子供が泣いていた・・・・・(-_-;)
トランパーはしつこくて恐ろしい人物ですが、どこか憎めない部分のあるキャラとして造形されています。
本人は真面目なんだけど、どこか滑稽。最後にはちゃんと報いを受けているけど、別に死ぬわけではない。
キャラはいたって真面目なんだけど、どこか滑稽という雰囲気は、「羊のショーン」の世界ではとても重要な描き方になっています。
常識から外れている滑稽さであったり、ルールを無視したことでパニックになったり、本人は必死なんだけど空回りしている滑稽さです。落語とかに通じる笑いかもしれないですね。
愛すべき欠陥や欠点があるキャラたちが、見ている間に大好きになってしまう作品です。
「ひつじのショーン」はスタッフにも愛されている映画!
冒頭では、写真撮影をする昔の牧場主と、幼いビッツァーやショーン達が映っていました。その写真の思い出が、後半の切羽詰まった緊迫感のあるシーンで生きてくる演出もお見事です。助かるかどうかギリギリの状況でも、ちょっとホロリとさせるシーンになっています。
収容センターの居場所のない動物たちにも、ちゃんと救いを用意するエンディングなど、気配りがあります。どのキャラも粗末に扱われていないので、ちゃんとスタッフに愛されている作品なんだな、と思います。
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