『イミテーション・ゲーム』レビュー!組織のなかのアラン・チューリング

黄色 ドラマ
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今回ご紹介する映画は、『イミテーション・ゲーム』です。第二次世界大戦中に、ドイツの暗号解読に挑んだ若き数学者アラン・チューリングの人生を描いた物語です。

ベネディクト・カンバーバッチの好演もあって、見ごたえのある映画になっています。歴史の裏側を覗いてみたい、というときにおすすめの映画です。

『イミテーション・ゲーム』のあらすじ

林檎と時計

第二次世界大戦勃発直後、若き天才数学者アラン・チューリングはドイツの暗号エニグマ解読の仕事に従事する。

暗号解読のマシン開発に没頭するチューリング。不器用で変わり者扱いのチューリングは孤立しがちだったが、良き理解者である同僚ジョーンの協力もあり、エニグマ解読に成功する。

戦争終結後、チューリングは大学教授となっていたが、ある事件をきっかけに同性愛者であることが判明してしまい・・・。

個人的には本作は、前回紹介した「英国王のスピーチ」を見てから視聴することがおすすめです。

  • 「英国王のスピーチ」 → 第二次世界大戦勃発直後の国王のスピーチで締めくくり
  • 「イミテーション・ゲーム」 → 第二次世界大戦勃発直後から話が始まる。英国王のスピーチも冒頭に流れている。

というわけで、時系列としてぴったりですよね。舞台もイギリスだし。

歴史を題材にした伝記的映画が好きな方には、かなりおすすめの映画です!

『イミテーション・ゲーム』の時間の流れについて

本作の中では、3つの時間軸が進行していきます。

  • 1928年・・・チューリングの学生時代。16歳くらいか。シャーボーンスクールでも変わり者扱いでなじめない。親友クリストファーとの出会いで、暗号に興味を持つようになる。
  • 1939年・・・第二次世界大戦勃発。暗号解読のためイギリス海軍の職務に就く。
  • 1951年・・・終戦後。大学で数学の教授となっているが・・・。自宅への盗難をきっかけに警察の捜査が入ってしまう。

3つの時間軸が混在しているのですが、うまく切り取ってストーリーに挿入しているため、混乱なく見られます。

ところどころにさしはさまれる学生時代の記憶は多くはないけれど、アラン・チューリングの人生を決定づけた内容です。特に唯一の親友だったクリストファーがどんな人物であったのか、どんな別れをしたのか。

学生時代の記憶が、チューリングの人物像を理解するうえで、欠かせない、また切ない内容となっています。

組織か個人か?その間で苦悩するアラン・チューリング

クロスワードパズル

難解で重要な使命を持つ組織+人付き合いが苦手でマイペースな主人公+天才的な才能+チームワーク

組織に所属することで、個人が能力を開花させたりチームワークに助けられたり、といった面がある一方で、組織の利益のために自己を犠牲にせざるを得ないことも多々あります。

本作は、重要な使命や任務をもった組織の中で、ある一人の天才が味わうやりがいや苦悩を描いています。

主人公アラン・チューリングは天才的な頭脳を持ちながら、集団生活にはおよそ向いていないタイプの性格。しかも性的マイノリティという秘密まで持っていたので、余計に人間関係が苦手な人物として描かれています。

マイペース過ぎて協調性が無く、イギリスの軍人からは疎まれてしまう存在。しかし、任務としてドイツの暗号エニグマを解読するという重要な使命があり、しかも主人公でなければなかなか解決できない難題。

暗号を解読したからといってそれで終わりではなく、その後、暗号解読を駆使して、戦争をできるだけ被害を抑える方向に使わなくてはならない。

チューリングが性的マイノリティであったことも、社会という巨大な組織の中での苦しみになったはず。

組織の価値観が上か、個人の尊厳が上か、といった問いはいつの時代にも付きまとうのです。

組織のなかの苦悩する個人、という普遍的なテーマが本作には据えられています。

チューリングとジョーンの友情について

アラン・チューリングを演じるのはベネディクト・カンバーバッチ。気難しい、神経質そうな学者や研究者を演じてもらうと、よく似合うんでしょうね。今回もややマイペース過ぎる天才を演じていて、とてもハマっています。

マシン開発にかける自信に満ちた表情も、ラストの気弱そうな表情も、ベネディクト・カンバーバッチの演技も本作の大きな魅力だと思います。

チューリングがどれほど天才でも、周囲とチューリングをうまくつないでくれる同僚ジョーンがいないと、エニグマ解読は難しかったはず。

チューリングは頑固で自分の考えを譲らず、自分の考えこそが唯一の方法であると思っている。そこに対立する概念として、ジョーンという異性の友人が登場します。

対立する概念を混ぜ合わせることで、チームワークがやっと動き始める。このあたりに、チームワークものの面白さや醍醐味があるのです。

チューリングとジョーンは結局、結婚はしなかったけど、異性の友人としての関係は最後まで描かれていました。

本作の名セリフである「誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げる事だってある」は、クリストファーからチューリングへ、チューリングからジョーンへ、そして最後にはジョーンからまたチューリングへ。

大事なシーンで繰り返し発言され、相手に渡されていきます。

まとめ:埋もれていた歴史のひとつを見られる

映画の最後は悲劇的な結末を伝えて終わりますが、その背景にはキャンプファイヤーみたいな感じで、今までの業務の文書を燃やすメンバーの姿が映っています。

難易度の高い仕事をやり遂げたあとの満足そうな表情や、なにか楽し気な表情を見ていて、ほんの一時の輝きみたいなものを感じて、少し切なくなるのです。

歴史の中に埋もれていた人物とその周辺に光を当てた、見ごたえのある1本ですよ☆

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