「英国王のスピーチ」身分違いの友情を考えてみる!

カラフルな花 ドラマ
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今回のおすすめ映画として取り上げるのは、「英国王のスピーチ」

実話をベースにしつつ、良質のドラマになっています。歴史が好きな人なら、歴史の舞台裏を知ることが出来る作品として楽しめます。

「英国王のスピーチ」あらすじ

大事な式典において、権力者のスピーチは、国民の意志を統一するためにも重要。とりわけ大英帝国の支配者ともなれば。

なのに、アルバート王子(のちのジョージ6世)は吃音のため、満足なスピーチができない。吃音の改善のために、言語療法士・ライオネルの風変りな治療を受け始めるアルバート王子。

平民なのに、王族に対して友人のようなふるまいをしてくるライオネルにいら立ちを感じながらも、次第に王子は自分の悩みを打ち明けるまでになる。

時代は第二次世界大戦直前になり、ドイツとの戦争開始に向け、国王となったジョージ6世(アルバート)の宣戦布告のスピーチが始まる。

監督:トム・フーパー
出演: コリン・ファース/ヘレナ・ボナム=カーター/ジェフリー・ラッシュ
公開年:2010年
製作国:イギリス・オーストラリア・アメリカ

「英国王のスピーチ」は身分違いのバディの友情もの

犬と猫

のちの国王と、平民の言語療法士という、あまりにも身分が違い過ぎるコンビが共通の目標に向けて苦楽を共にするストーリー。いわゆるバディとの友情ものですね。

身分は違うものの、二人の共通点としては、なりたい姿にはなかなかなれない自分ではないかな、と思います。

  • アルバート王子・・・吃音によって悩まされている、スピーチが上手くできない、国王になるような自信はない。
  • ライオネル・・・オーストラリア出身。俳優志望だったようだが、それはうまくいかなかった模様。英国ではしょせん異端の存在。

アルバート王子は身分は高いものの、劣等感を持つ人間として描いたことで、観客に親しみを持たせる形になっています。

映画の冒頭では、吃音のためにうまく演説ができないシーンをしっかり見せておき、最後にはドイツへの宣戦布告という歴史的なスピーチを成功させるシーンが置かれています。

人前で演説も満足にできないみじめな姿と、変化した後の威厳ある王としての理想的な姿。その対比はわかりやすく、本作は、なりたい自分の姿に変わっていくアルバート王子の物語です。

その隣を併走するのが言語療法士・ライオネル。当時、オーストラリアは英国の支配下にあり、オーストラリア出身のライオネルは英国では異端的存在。周囲からの評判はいまひとつ良くない存在、下に見られる存在として描かれています。

ライオネルという人物をどれだけ魅力的に描けるかによって、映画の印象が大きく変わってしまうと思いました。治療のためなら、王族に対してもずばずば意見が言える、しかし信頼も得る。このキャラはなかなか難しそう。

最初はいまいち信用していなかったアルバート王子が、次第に打ち解け、ライオネルの治療を継続することに説得力を持たせる必要があるので。

バディものはどれだけ両者の価値観をぶつけることができるか、どのあたりで妥協点を見出すのか、あたりに見ごたえがあるものです。

まったく身分が違う二人がどんなプロセスを経て、最後の名スピーチにたどり着くか。時には反発や対立、身分の差を感じながらも、ひとつのゴールを目指す映画です。派手さはないんですが、いいドラマに仕上がっています。

スピーチ終了後に変わってしまう国王とライオネルの友情

お茶

ラスト近くに印象的なシーンがあります。ついに国王としてのスピーチを終えたとき、ジョージ6世とライオネルの関係がはっきりと変わっていることを示すシーンがありました。

劇中では王族を愛称で呼ぶなど、無作法とも思える態度だったライオネルに腹を立てていたこともあるジョージ6世。

しかし見事にスピーチの大役を果たしたあとには、ジョージ6世がライオネルのことを「わが友」と呼んでいます。その一方で、ライオネルは「陛下」と呼んでいるのです。

呼称は人間関係の距離感を計るひとつの目安です。ライオネルのほうが、国王との関係性が変わったことを先に認識しているんだな、と印象深いシーンでした。

その後も二人は友人であったらしいですが、愛称で呼ぶような対等な関係(少なくともライオネルは治療のために、そうあろうとした)は、スピーチという大事な目的を果たした時点で、解消していたんだな、と思うのです。ちょっと切なくなってしまうんですけどね。

まとめ:スピーチを通した二人三脚のドラマ

最終的には見事にスピーチを成功させ、国王としての威厳を示したジョージ6世。国王としてスピーチが上手いことはもちろん重要ですが、国王という地位にふさわしい自信を身につけていくプロセスを描いた作品ですね。

成長や変化になんらかの代償はつきものなので、目的を果たした以上、ライオネルとの関係性は変わらざるを得ないし、そこに少しながら寂しさもあるのです。

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